試合終了 ページ37
ー黒田sideー
卒業式が一時中断するなんて前代未聞の事態を引き起こしたAが停学を喰らって1週間。大罪まみれの送辞の言葉により、計2週間の停学処分となったAの停学が明ける頃には在校生も春休みに入り、4月には俺たちは3年になる。
「あー、黒田。修了式終わったらすぐ実家帰るの?」
と、Aのロッカーや机の中を片付けていた植野が言った。
「おぉ。次の日から帰る。長期休みの度に寮閉まっちまうからな。うちの部、寮生多いから必然的に部活も休みだし」
と言いつつも、きっと身体が疼いて寮が開く4月3日にはここに戻って来てそうだ。部活は5日からだけど。
「じゃあさー、悪いんだけどAの荷物、実家に持って帰ってあげといてよ」
「は?!なんで俺が?!」
「来年度も使いそうな教科書とかは私の部屋に置いておくけど、いらないものとか。ほら、教室空にしてしまわないといけないからさ……あ!ヤダ。私があげたお菓子、ロッカーの中に入れっぱじゃん!」
これも、と言いながら大きな紙袋に次から次に荷物を詰める植野に、そもそもAは今どこに居るのかと聞くと
「聞いてないの?静岡だよ」
どうして、その答えだけでAが今、どんな顔してんのか想像出来たんだろうな、俺。
「あいつ、マジでバカなんじゃねーの?」
「普通さ、停学中は実家で大人しくしてるもんなんだろうけどねー。Aのご両親は何も言わないのかな?」
「さー?おじさんもおばさんもAに甘いからな」
「……黒田もね」
正直、あの卒業式でのAの笑顔は永遠に忘れられねーと思う。黒く嬉しそうな微笑みより、綺麗な淡い微笑みより、荒北さんへ向けた一筋の微笑みは最高に綺麗で幻想的で、そこは異次元で。
誰の侵入も許さない世界で試合終了のコールが鳴り響いた瞬間だった。
「バーカ。あいつに甘く接した覚えはねーよ」
「そう?私の気のせいかー?」
「おぉ。気のせいだ」
「だったら、そういうことにしてあげるよ。はい。これ、Aの実家によろしく!」
植野が差し出した紙袋はとても1人では到底運べそうにない質量と重量。あいつ、停学にならなくても、俺と塔一郎に持たせるつもりだったな。
つーか。停学中にブチかましてるとは呑気なもんだな、オイ。いや、正確にはブチかまし合ってんのか? まぁ、どっちでも良いけど。
とにかく、あいつが実家に戻り次第、この荷物を運ばせたことと停学中のフザけた堕落を――痺れるまで叱ってやるよ。
fin.
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eye(プロフ) - 色々色の助さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!勿体ないお言葉ありがとうございます。慣れない書き方に苦戦しましたが、そう受け取って頂けて嬉しいです(^^)これからも色んなお話に挑戦していきたいと思ってます!応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - ミリアさん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!中途半端な三つ巴になってしまいましたが、お楽しみ頂けましたか?こちらこそ、いつも応援ありがとうございます(^^)今後もゆっくりですが、色んなお話に挑戦しようと思いますので応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます。攻められる荒北さん、お楽しみ頂けたようで嬉しいです。他作品のご愛読感謝致します!これからも応援よろしくお願い致します(^^)最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
色々色の助(プロフ) - 完結お疲れ様でした。ここでは字下げや文を意識したような作品はなかなか見受けられませんがこれは物語としての表現などとても纏まり良く大好きでした!!受け身の荒北も楽しかったです。eyeさんの物語の着眼点にはいつも驚かされますwこれからも応援してます(*^^)v (2016年2月10日 22時) (レス) id: 505784ee23 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア(プロフ) - 完結お疲れさまでした(*^^*)攻める夢主vs攻められたくない荒北に攻める黒田が加わって面白かったですwwいつも楽しいお話をありがとうございます!これからもeyeさんの作品楽しみにしてます。 (2016年2月10日 22時) (レス) id: 152cfe1d9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:eye | 作成日時:2016年1月26日 21時