攻守交代-GameSet-【弱虫ペダル/荒北靖友】

44回戦 ページ4

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「ちょっ、どこ行くんですか？」
「良いからァ！黙って付いて来い。ここじゃ人が多すぎんだヨ」

　ユキのアドバイス通り、学校に戻り自分のクラスの階を通り越して3階へ上がった。単純に先輩のクラスが何するのか聞くためだったんだけど。……いや、少しだけブチかます隙があればラッキーとは思ってたけど。

　どうしよ？！ 人が居ないトコですることなんて……1つしかないよね？！

　先輩は――とうとうブチかまされる気になったんだ！

　良かった。中間テストから毎日紐パン履いて登校した甲斐があった。

――ママ。私はとうとう念願の荒北先輩をブチかますという夢を今日、叶えられそうです。冬休みに帰る際は明るい報告が出来そうだよ！

　この先は屋上だ。ホントはハジメテはベッドの上が良かったんだけどなー。敷かれる側の先輩の身体のためを思っての私なりの優しさだったんだけど。
　先輩が硬いコンクリートの上で背中を痛めても、私知らないよ？

「っし。ここなら誰も居ねェ」

　目的地到着。生徒は皆、浮かれて文化祭準備に勤しんでいる。
　無人の空気が流れるここで――

　秋めいたこの季節。

　いつかのようにシャツ1枚というわけではなく、上からブレザーを羽織った先輩はここまで来る途中にブレザーのボタンを外し、更にシャツの第二ボタンを開襟していた。

――先輩も準備万端なのね

「では、お言葉に甘えて……」

　ブレザーを肩から落としてあげて、3つ目のボタンに指を掛けると、先輩がギョッとした目を開いた。

「オイ！甘えられるようなお言葉なんて掛けてねェヨ？！」

　咄嗟に掴まれた両手首。びくともしない。
　これが男の人の力なのか。ううん、きっと本気を出せば私の頼りない手首なんて簡単にへし折られてしまうだろう。そんな力強い先輩が全身の力が抜けてしまうくらいトロけてしまう様は――きっと極上の甘い至福なんだろう。
　じゃなくて。

「はぁ？！先輩もヤル気満々だったじゃん！」
「ア？！何をトチ狂ったらそーなんだヨ？！」
「え？先輩が自らボタン外しましたよね？！人気のないところへ連れ出しましたよね？！ここにきてストップかけられるなんて鼻先にドックフード置かれたままジャーキーで口の中を弄ばれて待てを喰らう犬になった気分なんですけど？！」
「……ハ？意味分かんねーヨ？！」

　まさか――先輩の思い描くブチかまし方がこんな嬉戯とは想像してなかった。
　やっぱり先輩は罪深い。

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