56回戦 ページ16
ー黒田sideー
「あっつ!」
「アブ!アブ!」
「は?」
3人の掛け声はバラバラなのに。つーかむちゃくちゃなのに息が合うから不思議なもんだ。
たぶんこの2日間行った餅つきで、一番歓声が湧いたんじゃね? だからって嬉しいかと聞かれたら微妙だけど……。
でも――なぜかこの時間が永遠に続けば良いのに。なんて思った自分も居て。……まぁ永遠っつーのは、実際イヤだけど。
普通に楽しかったんだと思う。3人で何かするなんてすっげー久々で。一緒には居たけど、だからって何かするわけじゃなくて。
塔一郎とは部活で色々やってきたけどAも交えて何かするって……最後はいつ、何だったのか思い出せないほど、遠い過去だ。
幼い頃には当たり前だった風景も、思春期とかそういう厄介な感情が邪魔して勝手に溝を作って。ツンケンしてる方が格好良いとか甚だしい勘違いとかして。
そんな俺自身を俺自身が俯瞰で見てる今なら――
素直になりつつある自分をAに会わせたくなったりすんのは――なんでなんだろうな。
満足そうに笑う塔一郎とトッピングくらいさせてよ! とクラスの女子に頬を膨らますAを眺めながら、淡くユラユラとそんなこと思ってるいると呆気なく、現実の真ん中に立たされたような言葉が届く。
「先輩ー!熱々のお餅、アーンさせて下さい!!」
「ア?!イヤだヨ!熱々なんだろォ?!」
「はい!素敵な汗が滲み出るほど熱々ですよ!」
なんてないはずのいつものやりとりなんだけど……なぜか違和感。
その攻防は似て非なるもののようだった。Aの笑い方も荒北さんの突き放す言葉も。今までと同じようなのに、ニセモノのようだ。
現実の真ん中でこのまま“ただの幼馴染”という枠に立ち尽くすのか、と俯瞰の俺が問い掛ける。
答えは――
「なぁ。A、午後からどうすんの?」
俺の問いにAの口端が引き吊るのが分かったけど。たぶん、間違ってねぇ。
荒北さんの眉間のシワが深くなったのも分かったけど。たぶん間違わねぇ。
「なんも予定ねーなら……」
一度、荒北さんの方をチラリと見たAが何かを訴えるような視線を送っていたけど、そんなの荒北さんは気付けねぇよ。
たぶん、俺の進取的な行動に喰らい付くタイミングを探ってて、それどころじゃねーから。
だったら、その隙すら絶ってやる。
「俺と居ろよ」
素直な想いは時として、独りよがり。そんなこと、まだ分かんなかった。
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eye(プロフ) - 色々色の助さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!勿体ないお言葉ありがとうございます。慣れない書き方に苦戦しましたが、そう受け取って頂けて嬉しいです(^^)これからも色んなお話に挑戦していきたいと思ってます!応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - ミリアさん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!!中途半端な三つ巴になってしまいましたが、お楽しみ頂けましたか?こちらこそ、いつも応援ありがとうございます(^^)今後もゆっくりですが、色んなお話に挑戦しようと思いますので応援よろしくお願い致します! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます。攻められる荒北さん、お楽しみ頂けたようで嬉しいです。他作品のご愛読感謝致します!これからも応援よろしくお願い致します(^^)最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!! (2016年2月11日 0時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
色々色の助(プロフ) - 完結お疲れ様でした。ここでは字下げや文を意識したような作品はなかなか見受けられませんがこれは物語としての表現などとても纏まり良く大好きでした!!受け身の荒北も楽しかったです。eyeさんの物語の着眼点にはいつも驚かされますwこれからも応援してます(*^^)v (2016年2月10日 22時) (レス) id: 505784ee23 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア(プロフ) - 完結お疲れさまでした(*^^*)攻める夢主vs攻められたくない荒北に攻める黒田が加わって面白かったですwwいつも楽しいお話をありがとうございます!これからもeyeさんの作品楽しみにしてます。 (2016年2月10日 22時) (レス) id: 152cfe1d9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:eye | 作成日時:2016年1月26日 21時