攻守交代-GameSet-【弱虫ペダル/荒北靖友】

55回戦 ページ15

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　ユキが急に女の子扱いなんてしてきたから反応に困った。無意識に避けてしまったけど、そんなのたったの1日だけだった。いや、1日にも満たなかった。
　昨日の夕方には元に――戻ったのかさえ分からない。
　文化祭1日目はそんな風に……ただ、過ぎていった。

　文化祭2日目。前半はクラスの餅つきに参加して後半は自由時間。

「おォー、やってんナ」

　クラスメイトが次のもち米を準備する中、それに触るな！ と前日、蘭に釘を刺されてしまい、臼の前で待機していると制服姿の荒北先輩がやって来た。

「オメェ、何サボッてんだヨ？」
「調理場には立ち入り禁止令が出たので」
「……何したんだヨ、オイ」
「まだ何もしてませんよー」

　気のせいだろうか……。心なしか先輩が楽しそうに微笑んでいる。

「ていうか、なんでキュートなお洋服着てないんですか？！」
「ア？今日は1日自由時間なんだヨ」

　なんてこった！ 貴重なキュートな先輩を見損なったじゃないか！ いっぱい写メ撮ろうと思ってたのに！！ ついでに恥ずかしそうにしてるであろう先輩にどんな愛の言葉を囁こうか企むつもりだったのに！
　ユキのことばっか考えてて先輩のことすっかり……

――忘れてた？

「最悪だ……。なんて失態を……」
「Aちゃん、そんなに靖友の昨日の格好見たいなら、写メ送ってあげよっか？」

　私の呟きは先輩のキュートな格好が昨日でお蔵入りしてしまった嘆きではなく、昨日1日中ユキのことばっか考えていた自分への嘆きだったんだけど。荒北先輩の隣に居た――誰だっけ？いつも荒北先輩と一緒に居る……

「ちょっ！新開ィ！テメェいつの間に撮ってんだヨ？！さっさと消せ！ボケナス！」

　そうそう。新開先輩だ。

「是非送って下さい！」
「じゃ、連絡先教え……」

　荒北先輩は新開先輩の後頭部をスパンッと叩いて言葉を止めた。

「勝手なことしてんじゃねーヨ」

「Aー！始めるから、そっち準備してー！」

　クラスメイトの声で先輩の元を離れると
「見ててやんヨ」
なんて、余裕そうにニヤリとした先輩の表情にゾクリとして、何も言えず頷くだけで精一杯だった。

　昨日に引き続き、浴衣姿のユキが調理室からもち米を運んで。なぜか隣にはアブがいて。

「塔一郎がやりてぇらしいからA、手返しな」
「えー。私もつきたい！」
「お前、昨日散々やってただろ？！」
「仕方ないなー」

　幼馴染が2人向い合わせで立ち、間に腰を落とした。

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