Extra capter-11- ページ41
ー荒北sideー
「うん……。あっありがとう。別に急ぎではなかったんだけど。今買い物しててっ……渡したいものあったから」
Aチャンのいつもの綺麗なリズムは少し上擦り、言葉を詰まらせた。
「ンー……それ、今日もらっても良ィ？」
声を聞くと、会いたくなる。きっと電話の向こうで浮かべてるであろう間抜けヅラをこの目に写したくなる。
「……今日会えるの？」
「ン。今、新開と昼飯食ってっから、少しコース変更してそっち戻るヨ」
「じゃあ、近くまで来たら連絡して。駅の方まで出るから」
「んや。今日はさみィから家に居ていーヨ。アー、その代わりっつーか……その……」
上がりっぱなしの心拍を落ち着かせるため、時間をかけて大きく冷たい空気を吸い、ゆっくりと白い息を吐いて――
「住所……教えて」
別に変な意味じゃなくて。“渡したいもの”をもらうため。なんて建前な気がするが――気のせいっつーことにしよう。じゃねェと、暴れ続ける心臓がやる気を手放し、帰り道のペダルを踏む力を弱めてしまいそうだ。
「……あ、住所はっっ！メッメール送ります！あ！でも部屋片付けるっので……ゆっくり、安全運転でお越しください」
綺麗なリズムは何処へ――と思いながら溢れた笑い。しつこいくらい表情筋が仕事を放棄する。
案の定、店へ戻ると新開から
「おめさん、顔……緩みすぎ」
と苦笑いのような穏やかな微笑みを向けられた。
「ヤッベェ……勢いで家行くとか言っちまったけどォ……すっげー緊張してきたァ」
「え？今から？」
「おォ。つーことでワリィんだけど、帰り道は最短コースナ」
やれやれ、と溜め息を溢しつつも足早に帰路へ走り出した新開の後ろを走り、すでに息が乱れるほどの緊張と期待で胸いっぱいのせいか力が抜けていくような感覚と、一刻も早くAチャンに会いてェと逸る足は、なんだかバラバラなリズムなのにピタリと噛み合った瞬間、それまでとは比べ物にならないくらい勢いよく冷たい風を突っ切った。
「やっぱ気持ち良いわ。ロード」
「そうだな」
この気持ち良さの目的地がAチャンの間抜けヅラって――なんだかすっげー贅沢だナ。
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なのくさ - 泣きました。 夢小説で、なくなんて思わなかったですけど、とっても感動しました! (2019年7月29日 21時) (
レス) id: b643c5bfb9 (このIDを非表示/違反報告)
妄想系女子(。-∀-) - この小説読んで荒北好きになりました！会話文ばっかりじゃなくて、心情とかの表現も共感できて読んでいて本当にドキドキして面白かったです！もう、なんというか、ご馳走様です(ﾟ¬ﾟ*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 7100b370ac (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - るきさん» コメントありがとうございます。私には勿体なさすぎるお褒めの言葉、ありがとうございます。恥ずかしいくらい嬉しいです(笑)お楽しみ頂けたようで光栄です！こちらこそ、最後までご覧頂き、ありがとうございました。 (2016年7月16日 15時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
るき - すごくキュンキュンしました。こんなにいい作品つくれるなんて。すごい、プロの小説家みたいです( ´ ▽ ` )ﾉほんとすごい、面白かった。ほんと幸せな気持ちになれましたありがとうです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年7月16日 14時) (レス) id: 12db367a59 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - Ａｋｋｉｙさん» こちらもコメントありがとうございます。原作要素はロードに乗ってるってことくらいですが、荒北さんならこんな社会人になってくれてるかな、なんて(笑)真面目な恋物語は苦手な私ですが、お楽しみ頂けたようで嬉しいです(^^) (2016年5月21日 21時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eye | 作成日時：2015年12月4日 21時
