Extra capter-9- ページ39
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新規提案の依頼があったため、荒北くんの営業に同行した。商談が予定より早く終わったせいで、直帰にしては早すぎるし、本社に戻ってもすぐに定時を迎える中途半端な時間。
荒北くんはというと、大きな袋に収めていた自転車をあっという間に組み立て、スーツから自転車スタイルにお色直しを済ませ、防寒対策も抜かりなく終えている。
こりゃ、私が居なかったら間違いなく直帰という名の自転車の旅に出掛けているな。
だって今日は水曜日。新開さんと走る日だ。
「ア。ちとコンビニ寄るから、ロード持っててェ」
「良いけど……その格好で入るの？」
「なんか問題あるゥ？」
顔を防寒具で覆いつくして入店するのはアリなの？！ 銀行とかじゃなければアリなのか？！
「……荒北くんが問題ないと思うなら良いんじゃない？」
と、私が自転車を預かると、荒北くんは首を傾げて自動ドアをくぐった。
表情が全く読み取れない防寒具の下はきっとなんのことだかさっぱりって顔をしてるんだろうな。
――遅いな。何してるんだろ？この時間なら……今日は直帰だな
不安定な自転車を倒さないように支えながら、コンビニの中を覗くと――
「は？！何で漫画なんて読んでるの？！」
驚きで、つい大きな声で飛び出した一人言に通行人が一瞬足を止めた。
2月の寒空の下、私に自転車と一緒に待ちぼうけを喰らわせ、自分は暖房の効いたコンビニで週刊少年漫画を読んでるなんて。これは、上司として笑って済ませられる問題じゃない。
コンコンと荒北くんの前のガラスをノックすると、またも首を傾げた。私が手招きをすると手にしていた漫画を置き、首を傾げたまま戻ってきた。
「ちょっと！何漫画読んでんの？！」
「アー……やっぱダメだったァ？」
「ダメです。仕事は終わったかもしれないけど、仮にもまだ勤務時間内なので……」
「ア？そっちィ？」
「そっちって……他に何があるの？！」
目元まで覆っていた防寒具を首まで下げた荒北くんは先程のこもっていた声じゃなく透き通る波が引くような小さな声で
「一人にされたの怒ってんのかと思ったァ」
と呟き、ニヤリとして
「アー……Aチャン、自分から会いたいとか一緒に居たいとか言わねェから別にそうゆーの気にしねーカンジィ？」
なんて、答えに困るイタズラな質問。
はぐらかすように
「勤務時間中はちゃん付けて呼ばないで！」
と答えると
「ヘーイ」
またニヤリ、荒北くんは広角を上げた。
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なのくさ - 泣きました。 夢小説で、なくなんて思わなかったですけど、とっても感動しました! (2019年7月29日 21時) (
レス) id: b643c5bfb9 (このIDを非表示/違反報告)
妄想系女子(。-∀-) - この小説読んで荒北好きになりました！会話文ばっかりじゃなくて、心情とかの表現も共感できて読んでいて本当にドキドキして面白かったです！もう、なんというか、ご馳走様です(ﾟ¬ﾟ*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 7100b370ac (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - るきさん» コメントありがとうございます。私には勿体なさすぎるお褒めの言葉、ありがとうございます。恥ずかしいくらい嬉しいです(笑)お楽しみ頂けたようで光栄です！こちらこそ、最後までご覧頂き、ありがとうございました。 (2016年7月16日 15時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
るき - すごくキュンキュンしました。こんなにいい作品つくれるなんて。すごい、プロの小説家みたいです( ´ ▽ ` )ﾉほんとすごい、面白かった。ほんと幸せな気持ちになれましたありがとうです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年7月16日 14時) (レス) id: 12db367a59 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - Ａｋｋｉｙさん» こちらもコメントありがとうございます。原作要素はロードに乗ってるってことくらいですが、荒北さんならこんな社会人になってくれてるかな、なんて(笑)真面目な恋物語は苦手な私ですが、お楽しみ頂けたようで嬉しいです(^^) (2016年5月21日 21時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eye | 作成日時：2015年12月4日 21時
