73.ここから先、気のせいじゃない ページ27
ー荒北sideー
バァカ。
「悪口なら本人に聞こえねートコで言えヨ。」
会社に戻り、息を整えながらゆっくりと事務所へ向かうと
突然聞こえたAサンからの軽い暴言。
思わず笑っちまったのは
その暴言の前の勘違い。
A「なんで…会社に戻って来てんのさ。
仕事残ってたなら……焼肉なんて後回しにすれば良かったのに。」
軽く鼻をすすり、イスを蹴って背中を向けた。
「んやァ。
今日は気合いで終わらせたから仕事は片付いてんヨ。」
A「だったら、なんで…戻って…来たんですか…？」
震える声で、少しずつ小さくなる問いかけを聞き終わる前に自分のデスクに腰を落とした。
「あのさァ。
なァに部下に金払わせて逃げてんのォ？」
A「あぁ。
料金徴収のために追いかけてきたんですね。
今、払います。」
「じゃなくて。」
A「いくらでした？」
「じゃなくてェ…。」
A「早く…そのケーキ持って彼女のとこ行きなよ。」
冷たく、淡々と、サラサラと。
ポロポロと。
流れるような悲しげなリズム。
「居ねぇヨ、んなもん。」
A「はい？」
「いっつもオレには最後まで話聞けだの、
分からないことはその都度確認しろだの言うくせに
自分は話も聞かずに飛び出しちまうからなァ。」
A「……だって…甘いの嫌いって言ってたのにケーキなんて買ってたから…」
「オレには言い訳すんなとか言うくせに自分はしちゃうわけェ？」
A「………。」
黙っちまうとさァ、
分かんねぇだろ。
オメェが今、オレの後ろでどんなツラしてんのか。
空調の入っていない室内で
いつもの真新しい靴のニオイと
目の前に置いたケーキのクッソ甘いニオイと
クリスマスに選ぶにはちと失敗だったかもしんねー焼肉のニオイがごちゃ混ぜになって。
なのに、際立つ無色透明のニオイ。
つまりは、それがフィーリング。
「ダメ上司。マジで上司やめたらァ？」
後ろのイスが回転する音に合わせて振り返った。
A「は？！酷くない？！」
突き合わせた顔は暗い室内でも互いの顔が見えるほど近くて。
つまりは、それがハプニング。
「彼女居たら……飯なんて誘わねぇヨ。」
A「でも…そのケーキ。」
「彼女じゃねぇけどォ…一緒に食いたいヤツが居んのォ。」
つまりは、ここから先が…タイミング。
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なのくさ - 泣きました。 夢小説で、なくなんて思わなかったですけど、とっても感動しました! (2019年7月29日 21時) (
レス) id: b643c5bfb9 (このIDを非表示/違反報告)
妄想系女子(。-∀-) - この小説読んで荒北好きになりました！会話文ばっかりじゃなくて、心情とかの表現も共感できて読んでいて本当にドキドキして面白かったです！もう、なんというか、ご馳走様です(ﾟ¬ﾟ*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 7100b370ac (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - るきさん» コメントありがとうございます。私には勿体なさすぎるお褒めの言葉、ありがとうございます。恥ずかしいくらい嬉しいです(笑)お楽しみ頂けたようで光栄です！こちらこそ、最後までご覧頂き、ありがとうございました。 (2016年7月16日 15時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
るき - すごくキュンキュンしました。こんなにいい作品つくれるなんて。すごい、プロの小説家みたいです( ´ ▽ ` )ﾉほんとすごい、面白かった。ほんと幸せな気持ちになれましたありがとうです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年7月16日 14時) (レス) id: 12db367a59 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - Ａｋｋｉｙさん» こちらもコメントありがとうございます。原作要素はロードに乗ってるってことくらいですが、荒北さんならこんな社会人になってくれてるかな、なんて(笑)真面目な恋物語は苦手な私ですが、お楽しみ頂けたようで嬉しいです(^^) (2016年5月21日 21時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eye | 作成日時：2015年12月4日 21時
