71.カレシ、気のせいじゃない ページ25
ー荒北sideー
メニュー表を見ながら、
心ここにあらず
つー表現が相応しい態度のAサン。
初めはいつもと違う雰囲気のせいだと思い、
特に気にせず話を続けながら、
今まで深く考えたことなかった疑問が浮かぶ。
コイツ……もしかしてカレシ居んじゃねぇのォ？！
いつも残業ばっかで
休みの日も持ち帰った仕事してるとか、
サンプル履いて買い物行ったとかしか聞いたことなかったから
オトコなんて居ねぇもんだと勝手に思ってたけどォ。
“一人で”とは一度も言ってねぇ。
今日はクリスマス。
そんな日にいつもと違う雰囲気。
ひょっとするとさァ…
このあとカレシと待ち合わせしてんじゃナァイ？！
だとしたら、焼肉のニオイをプンプンさせて会いに行くのヤダなァとか思ってんじゃナァイ？
つーか、そもそもクリスマスに職場の部下と飯なんてめんどくせーとか思ってんじゃナァイ？
いや。
今日という日を指定したのはオレじゃねぇ。
コイツだ。
だったら、なんでさっきから、んな浮かねぇツラしてんだヨ。
勤務時間外も一緒に居れると浮かれてたのはオレだけかヨ…。
「……どしたァ？」
手元のグラスをボーッと眺めていた視線が上がる。
心なしか瞳が揺れたのは気のせいじゃねぇ。
A「え？」
「アー…いやァ。
今日がクリスマスだってこと、さっき気付いてェ…。
そのォ…。」
早くカレシんトコ行けヨ
なんて言っちまったら、マジで行ってしまいそうで言葉に詰まる。
「……アー。
このあと予定あ……」
A「やだ…！聞きたくない。」
「ハ？！」
突然立ち上がり、荷物をもって店の出口に向かって走り出したAサン。
いや！
ちょ！
このあと予定あんなら、もォ帰ろっかァ
って言う前に帰ってんじゃねぇヨ？！
つーか…
「なんで泣き出してんだヨ、バァカ！
クッソ！！」
急いで会計を済ませて、後を追うと
店員から
お客様、忘れ物です
と、買ったことさえすっかり忘れていたケーキを渡された。
あのバァカチャン…
どこ行きやがったんだァ？！
駅の方を見渡してもAサンの姿はなくて。
真逆の薄暗い道。
ついさっき、オレが浮かれながら足早に歩いた道の方から
冷たい風にのって無色透明のニオイがした。
Aサンのニオイだけを嗅ぎ分けられるっつーロードには不要な嗅覚が初めて役に立った。
72.足音、気のせいじゃない→←70.彼女、気のせいじゃない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 225人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なのくさ - 泣きました。 夢小説で、なくなんて思わなかったですけど、とっても感動しました! (2019年7月29日 21時) (
レス) id: b643c5bfb9 (このIDを非表示/違反報告)
妄想系女子(。-∀-) - この小説読んで荒北好きになりました！会話文ばっかりじゃなくて、心情とかの表現も共感できて読んでいて本当にドキドキして面白かったです！もう、なんというか、ご馳走様です(ﾟ¬ﾟ*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 7100b370ac (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - るきさん» コメントありがとうございます。私には勿体なさすぎるお褒めの言葉、ありがとうございます。恥ずかしいくらい嬉しいです(笑)お楽しみ頂けたようで光栄です！こちらこそ、最後までご覧頂き、ありがとうございました。 (2016年7月16日 15時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
るき - すごくキュンキュンしました。こんなにいい作品つくれるなんて。すごい、プロの小説家みたいです( ´ ▽ ` )ﾉほんとすごい、面白かった。ほんと幸せな気持ちになれましたありがとうです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年7月16日 14時) (レス) id: 12db367a59 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - Ａｋｋｉｙさん» こちらもコメントありがとうございます。原作要素はロードに乗ってるってことくらいですが、荒北さんならこんな社会人になってくれてるかな、なんて(笑)真面目な恋物語は苦手な私ですが、お楽しみ頂けたようで嬉しいです(^^) (2016年5月21日 21時) (レス) id: ec48e3633d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eye | 作成日時：2015年12月4日 21時
