D9 ページ10
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ハリーに連れられて来た先はロストの外れにある岬だった。
ベ「スノー！無事なのか？」
「ベン！えぇ、私は平気よ。あなたは？」
ベ「僕は大丈夫。」
甲板の柱に括り付けられたベンはどう見ても大丈夫には見えない。でも怪我はなさそう。
ウ「あんたがスノー？可愛い、可愛いプリンセス様？」
ハ「ウーマ！…こいつは俺の獲物だ。」
ウ「別に取って食おうなんて思ってないさ。アタシにはこの王様さえいればマルを痛めつけることが出来るからね！」
船上に響き渡るウーマの笑い声に少しばかり足がすくむ。
私は船上に連れて行かれずベンとは離れたところにウーマたちの手下によって繋がれた。なんとかして逃げられないだろうか…。
ハ「コチョコチョっと。王様ってどんな気分だ？」
ハリーは柱に括られたままのベンを馬鹿にしたように言う。ベンは何も返さないままだ。
ウ「やめときなハリー。傷物にしたくない。」
ハ「好きにしていいんだろ？」
ウ「正午にね。」
正午に何かの約束があるようだ。今までの話からしてマルを呼んでいるのだろう。
ハ「あと20分」
ベン「今11時半だよ。」
こんな時でも冷静に返すベンにハリーが悔しそうに離れる。
ウ「恋人が来ることを祈ってな。」
ベ「もう恋人じゃない。」
そう口にしたベンはさっきの冷静さはなく落ち込んでいるようだった。
ウ「ハリー、外しな。あのプリンセス様と遊ぶのはどうかしら？」
ハ「あぁ。」
こちらに近づいてくるハリーは心底楽しそうだ。「ヴィランズっぽい」笑顔を見せている。
「ハリーお願い。この縄外して。ベンのも。」
ハ「出来るわけないだろ？ウーマの夢が叶う瞬間だ。」
「あなたは？あなたの夢は何？ウーマの言うことをずっと聞くことなの？今ならまだ間に合うわ！」
ハ「黙れ！お前に何がわかるって言うんだ。」
俺が夢なんか持ったって叶うわけない。そう呟いたハリーはどこか悲しそうで。
そんなことないと口を開きかけた時向こうから歩いてくる人影。
ギ「あー！さっきの可愛い子！名前は？」
ハ「あっち行ってろギル。」
「スノーよ。よろしく。」
ギ「あぁ、よろしく。俺はギル。親父はあの有名な…」
さっき聞いたようなセリフをギルが言いかけた時だった。
ウ「時間だ。準備しな！」
ウーマの声がこだまする。空気が変わった。もう正午になるのだろうか。
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作者名：ちくわ | 作成日時：2022年5月26日 15時
