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ベ「ジェイ!キーとリモコンを。」


イ「待って!だめよ。」


そう言ったイヴィは「お行儀良く」被っていたベンのニット帽をぐしゃりと歪ませる。


イ「スノーはこっち。」


「え?」


私の顎をくいっと上に向かせたイヴィは真っ赤なリップを私の唇にのせた。


イ「良いわ。」


デュ「俺が助手席!」


聞こえた大きな声にみんなで振り返ればそこにはデュード。え、今…


ジ「こいつ、今…」


カ「しゃべったよ。説明はあとで。」


カルロスもいざこざがあったらしい。しょぼくれるデュードに視線を送る。


「カルロスはあなたが大切なのよ。いい子で待っててね。」


デュ「スノーのハグが条件」


カ「デュード!」


そんなデュードをカルロスが叱る。いつの間にか本当に良い相棒になったみたい。


ジ「行こう」




橋を渡るためにリムジンに乗り込む。不安そうなみんなの顔。うまくいきますように。





ロスト島に着いてリムジンから降りればひしひしと伝わってくる重たい空気。リムジンを布で隠していく。


「ベン、あれは…?」


ベンの腕を掴み大きな管を指さす。ゆっくり歩き出す彼に着いて行き中を覗こうとする。なんだか怖い。


ベ「この中は?」


ジ「ベン!スノー!…知らなくて良い。」


知らなくて良い…本当にそうなのかな?オラドンとロスト島がいずれ開かれた土地になるには全てを曝け出す必要がある気がするけれど…。



カ「みんな。気をつけよう。親に知られるとまずい。」


力強く頷きカルロスに続いて路地へ歩き出す。


空気が悪く時々咳き込んでいる人、服がボロボロな人、こちらを見て隙を伺っている人…オラドンではまず見ない光景に目を疑う。



「ベン、あまりみんなから離れない方が…」



ベ「そうだけど僕らが知らない世界だ。」


見る価値はあると歩き出すベン。


中学生の頃同じような理由で自由に歩き回ったベンは学校の裏の森で迷子になった。非常に心配。


「待ってベン。」


角を曲がった先にいた人にベンが握手を求めれば威嚇をされてしまう。どうしよう…


イ「ベン!挨拶はやめて。」


ジ「手はポケットに。」


カ「姿勢は悪く。」



笑顔は見せないで。お礼も丁寧な言葉もだめ。なんて私たちには難しいルールばっかり。ヴィランって大変そう。


イ「誰でもワルになれる方法教えて上げるわ。」




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作者名:ちくわ | 作成日時:2022年5月26日 15時

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