【コクロウサマ】と脱出条件。 ページ30
『要するに、人の手が必要なんだな?』
人助けは良いことだ。
ただ、頻度が程よければの話だが。
人助けも過ぎれば災難ともなり得る。
私達の場合は後者。
流石に巻き込まれすぎだ。
とはいえ今は駄々をこねては自分共々、共倒れ。
文句はここを出てから沢山言えばいい。
私とて聖人ではないのだから。
「……お前らからしたら気に食わないだろうが、今は大人しく俺の言うことを聞いとくに越したことは無いぜ。」
「……仕方ないわ、やるしかないのね。」
ふぅ、とため息をつく彼女ちゃん。
もう慣れてしまったのだろう、諦めに近い感情が読み取れた。
『で?ここを出るにはどうすりゃいい?』
「簡単だ。ラップバトルだよ。バトルだから相手が居なきゃ成り立たないだろ?」
ラップバトル……この単語を耳にしたなら彼氏さんが前に出るのは最早必然のように思えてきた。
最近は動物達は寒さのあまりに、少し早い冬眠する子が増えてきたので私は歌う機会が減った。
今回も私の出番は無さそう、なんて思いながら浮島の端であぐらをかいていた。
「お!最初はお前か。頑張れよ、おチビちゃん。」
「……どこかで見たんだよなぁ。」
皮肉を言ったAgotiに対し、訝しげにAgotiの顔を見ては悩む素振りをする彼氏さん。
「あら、音楽プレイヤーを鞄に入れたっきりだったわ。」
ピンク色の可愛らしい箱を出して、音楽をいくらか流す。
異常がないか調べているらしい。
『ラップバトルに使えないかな。ソレ。』
「使え……そうね。うん、三つだけ曲が入ってる。」
三つということは、ラップバトルがどれだけ長引いたとしても精々三戦目が限界だろう。
『……んな痴話喧嘩していたらいつまで経っても出れないぞ。はい、二人共準備は良い?』
「おっとっと。ちょっとだけ待ってくれ。」
そういって何もない空間からマイクを取り出すAgoti。
正直言って、私の祝福の方が規模も代償も桁違いなので、普通の人ならマイクが空間から出てきたら驚くのだろうが、私からしたら取るに足らない程に小さくて簡単なマジックのようだった。
「俺はOKだ。」
「僕も大丈夫。」
『んじゃ、頼んだよ。』
「ありがとうね。……3、2、1……GO!」
奇跡的にバッグにしまっていた携帯音楽プレイヤーで音楽を流す彼女ちゃん。
ここからはもうラッパー同士の真っ向勝負。
私達が口を開く資格はない。
ただ許されるのは互いの歌声だけ。
Agotiが不敵に、ニヤリと笑った。
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おげげいげ(プロフ) - 無名さん» 待たせてしまい、申し訳ありませんでした! (2021年10月11日 15時) (レス) id: 2c07cc7f92 (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 復活おめでとうございます!ワ-イ (2021年10月10日 17時) (レス) id: 776fdad7d6 (このIDを非表示/違反報告)
ヘル - おう…気を付けてー! (2021年9月20日 0時) (レス) id: efcdee336a (このIDを非表示/違反報告)
たっくぅ - 楽しみだぜ ゲヘヘヘヘ (2021年9月17日 22時) (レス) id: b647fd1089 (このIDを非表示/違反報告)
ヘル - さあこっからどうなるのか…楽しみですねぇ…フフフ (2021年9月13日 18時) (レス) id: 39d77ce8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おげげいげ | 作成日時:2021年9月8日 20時