【母親】と料理。 ページ19
野菜を適当な数取り出して洗う。
前まで心地よく感じてきた流水も、今は冷たくて仕方ない。
Sarventeは鍋を用意したりしているから、やはりこれは私がやるしかない。
冷たい冷たいと声には出さないが洗っていく。
こんなにじゃがいもの泥を恨んだ日はない。
物は有数。やがて野菜も全て洗い終える。
後はじゃがいもの芽取りだけだ。
包丁を上手く使って芽を切り取る。
一つだけたら大して苦労しないが、人数が人数。
中々な重労働だ。
下準備をやっとの思いで終える。
私もSarventeもくたくただ。
『やっぱ人数が多いと大変だなぁ……』
「普段は二人分しか作らないから……」
互いに二人分しか作らないため、大人数となると流石に疲れる。
普通の母親は子どもの為ならえんやこら、なのだろうが、私はまだ子どもを産んでもいないしなんなら付き合ってすらない。
Sarventeも二人を心配させまいと気丈に振る舞っていたようだが、限界が近いのか普段の明るい様も見られない。
慣れない世話にかなり大きな溜息を同時についた時だった。
「あれ……邪魔しちゃったかな……?」
『いや、大丈夫だ。それより何かあったのか?』
ぺたぺたと靴すら履かずに来たのはVictor。
お通夜のようなしけた雰囲気が漂うキッチンで何があったかしきりに聞こうとしてきたので、静かにじゃがいもや人参の山を指差せば、察したようだ。
母親ってここまで大変だとは思ってもみなかった。
いや、正確には人数の問題か。
「こ……これ全部剥いたり切ったりしたの?」
「……これでようやっと人数分よ。」
顔に影が落ちているSarventeが言えば説得力があるだろう。
これにはVictorも困惑したそうで、カレールーの箱の裏側にある、4人分の量と今の野菜の量を見比べていた。
私でもこの量は嫌になるけど、夕飯へこぎつくまでならば仕方ない。
結局、用件はなんだったんだと思いながら、改めてまな板へ向き直すと、Victorから止められた。
『何?』
「あ、えっと……僕も手伝っちゃ……駄目?」
いつもの私なら大丈夫と言って断った。だが、今の私達は完全に気が滅入っているため、私にしてもSarventeにしてもそれは素晴らしいものだ。
だから断る理由はないと思い、本当に藁にもすがる思いでお願いした。
二人だったら不便なことでも、三人いればそいつに多少は割り振れるからかなり楽だ。
Victorが来てくれなかったら今頃、私達はどうなっていたか。
想像もしたくない。
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おげげいげ(プロフ) - 無名さん» 待たせてしまい、申し訳ありませんでした! (2021年10月11日 15時) (レス) id: 2c07cc7f92 (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 復活おめでとうございます!ワ-イ (2021年10月10日 17時) (レス) id: 776fdad7d6 (このIDを非表示/違反報告)
ヘル - おう…気を付けてー! (2021年9月20日 0時) (レス) id: efcdee336a (このIDを非表示/違反報告)
たっくぅ - 楽しみだぜ ゲヘヘヘヘ (2021年9月17日 22時) (レス) id: b647fd1089 (このIDを非表示/違反報告)
ヘル - さあこっからどうなるのか…楽しみですねぇ…フフフ (2021年9月13日 18時) (レス) id: 39d77ce8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おげげいげ | 作成日時:2021年9月8日 20時