414 ページ14
「なに泣いてんの〜？ 凪じゃないけど佐久間の胸貸してやろっか？」
両手を広げる佐久間君がいけないんだよ。酔っ払いには冗談というものが通用しないから、その言葉をそのまま受け取って私は佐久間君の胸に顔を押し付けた。
「およよ？」と、きっと来るわけないって思っていたから声が慌ててる。
「……凪の傍にも誰か居てくれららいいのににゃ」
あ、噛んじゃった。恥ずかしい。でもいいや、顔は見られないしと、グリグリする。
「ちょーい、絶対鼻水つけてんでしょ？」
「……にゃいもん」
「にゃはっ、かんわいー」
嘘、佐久間君ごめんなさい。本当はちょっとついちゃったかもしれないです。でもきっと優しいから許してくれるはず。
私の涙が引っ込むまで佐久間君は背中をポンポンとしてくれていた。気が付いたら私はベットに寝ていて、記憶が色々と抜け落ちているようだった。
「……んあ？ 起きちゃった？」
「佐久間君、本当に泊まってる」
「泊まるっつったじゃーん」
喉を潤そうとキッチンへと行けば、ソファの上でゴロンとしていた佐久間君が顔を上げた。
そこで寝てたのか。お客さん用のお布団出さなきゃ。
水をコクリと飲んで、視界に入ったのは佐久間君が着ている服だ。
「ん、ああこれ借りたよ。ふっかのっしょ？」
「……うん」
リビングの隅っこにある深澤君コーナーから寝間着を拝借したようで、とくにお気に入りのモコモコしたやつを着てる。
布団、布団……と。クローゼットを開けて布団を出そうとすると佐久間君がお手伝いにやってきて手を伸ばしてる。
「深澤のを俺が着てるの嫌？ これあんがと。後はやるわ」
布団を持って行く佐久間君を見つめる。
今よくわからないことを訊かれたよね？ なんで深澤君の服を佐久間君が着てることを私が嫌と思うんだろうか。
「……あー、深く考えなくていいかんね。あと風呂も借りちった。あんがと」
「……いえ、それはどうぞお好きに。朝も勝手に入っていいので」
「ん、そうさせてもらう。それより早く寝なー。明日も舞台あんだから、二日酔いなんて許されねえぞ」
そうだった。後先考えずにガブガブ飲んでいい場合じゃなかった。またグタグタな舞台にしてはいけないんだから、佐久間君の言う通り酔いを冷まさなきゃだ。
「おやすみ……なさい」
素直に言われるがまま寝室に戻る。リビングを出る時に布団を敷いていた佐久間君に言えば「おやすみ」と、その笑顔を見たら悪夢には魘されないと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5246人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - setohuuさん» コメントありがとうございます😌 終わりました。先程全員エンドを書き上げました。最後まで楽しんで頂けたら幸いです😊 (2023年1月25日 22時) (
レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ももさん» コメントありがとうございます😌 終わりました。書き上げてきました。長く読んでくださりありがとうございました😊最後まで楽しんでください！ (2023年1月25日 22時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - シキさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです。時間かけりましたがやっと全員エンドを書き上げる先程公開したので良ければ最後まで楽しんでください！ (2023年1月25日 22時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございました！ワクワクしてもらえて良かったです😊全員オチなんとか書き上げることができました😊良ければ最後まで楽しんでいってください！ (2023年1月25日 22時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
setohuu(プロフ) - とうとう終わってしまうのですね🥹寂しいですが、全員分のENDを読めるなんて、とっても楽しみです！ここまでも、毎回次が気になってわくわくしながら読んでました！！更新いつでも待ってます。 (2023年1月21日 17時) (レス) id: 73c4318aff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2022年12月11日 22時
