292＿＿緑 ページ42
自分の気持ちは一生伝えるつもりはなかった。メンバーの妹に恋をしても、きっと上手くいかないって決めつけていたから。
初めて彼女に会った時、柔らかい物腰、照れたように話す仕草、俺やナギを気遣ってくれる優しさ。
年下なのにしっかりしていて、でも兄であるナギに甘えた表情を見せる時があって、それが無性に可愛く見えた。
『阿部ちゃんだったらいいかも』
『…なにが？』
別の日。ナギは問題を解きながらボソリと言った。
『ん〜、阿部ちゃんならAと付き合っても俺嫌じゃないかもって』
『ふはっ、なにそれ。ナギが嫌か嫌じゃないかでAちゃんの恋人って決まるの？』
『当たり前じゃん。俺の妹だぞ』
なんだその自信満々なそれは。笑うしかなくてケラケラ腹を抱えて笑いながら、でも心の中ではやったってガッツポーズしていた。
ほぼ一目惚れだった彼女に会いたくて、ナギは一度教えたらちゃんと出来る子だったから、何度も勉強会を開く必要もなかったのに『今日はどうする？』とナギに毎日聞きに行ってたんだ。
きっとナギは気付いてたのかもね。俺の気持ちに。たまにじっと見られて、考える素振りをされていたから。
それでも言われた『阿部ちゃんなら嫌じゃない』って言葉。それは俺を嬉しい気持ちにさせつつ、行動力を奪った。
ナギの信頼を、あの頃の俺は裏切らずに彼女を守れるかって自信がなかったから。
自分のことで精一杯で、これからデビューできるかも定かじゃなくて、自分の未来があやふやなのに大切なメンバーの一番大切な人に想いを伝えるなんて出来なかったんだよね。
だからこんなことになって、思わぬ形でAちゃんと再会してからも俺はずっと見守ろうと決めていた。
＿＿＿＿＿なのに、状況は昨日変わった。
昨夜、歌舞伎の稽古が終わって一度帰ろうとしたけど忘れ物をしたことを思い出した俺は稽古場へと戻った。
もう誰も居ないと思っていたけれど、ドアを開けたら俺の目に飛び込んで来たのは康二とAちゃんがキスをしている光景だった。
え、なにしてんの？
そう聞きながら入って行けなくて、そっとドアを閉めてしまった。
暫く二人の会話を聞いてると、康二まで彼女に気があるって分かって。どんどん俺の周りは彼女に惹かれて行くから、気持ちが落ち着かなくなってくる。
俺はこのままでいいと本気で思ってんの？
俺が俺自身に問い掛けた結果が、
「＿＿ハッキリ言うね。Aちゃん、俺は君が好きです」
これが俺の出した答えだ。
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ゆきんこ(プロフ) - yuyuさん» コメントありがとうございます！ キュンキュンさせすぎてすみません😂(よし！) 少しでも癒しになっていたら書くかいもあります！！ (2022年7月26日 23時) (
レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あやぱんさん» コメントありがとうございます😊 💛💜ですね！最初の方から女性として接してたので😌移行作業頑張ります！！！ (2022年7月26日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - sakiさん» コメントありがとうございます😊 この章のトリにしましたね💛距離感ですか！誰とどうなるか、これからも応援よろしくお願いします！ (2022年7月26日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - pontasasukeさん» コメントありがとうございます！ ええっ！初めて！？ そんな初めてもらえて、それを教えてもらえたのがまた嬉しいです😆ありがとうございます！体調崩しておりましたが、やる気いっぱいになりました！頑張ります！！ (2022年7月26日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます😊 さて誰を選びますかね😌 (2022年7月26日 22時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2022年6月17日 9時
