34錠目:『懐かしの味、ある愛の詩に』 ページ33
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｢......だいぶ、おちついた｣
｢それは良かった｣
軽く体重をかけてくる彼の背中を優しくさすり、やはり今の一瞬でも辛かったのだな、と1人で猛省する。
｢そろそろ夕飯にしましょうか｣
｢わーい!! Aの料理、大好き!!｣
｢佐曽塚もスタッフとして料理したり、コーヒーを淹れられるようにならなきゃね｣
｢......がんばるぅ｣
｢まぁ、ゆっくり少しずつ慣れようね｣
表情が分かり易すぎる彼に、仔猫のように耳としっぽが自信無さ気に垂れ下がるモーションが見えた気がした。
ふぅ、と一息ついた佐曽塚は気持ちを切り替えたかのようにキッチンへと立ち、私に教えを乞い、それに倣うように自身も気を引き締めた。
｢う〜ん、ちょっと味濃いかな......｣
｢そうお? 俺、このくらいが好みだよ｣
｢最近の人は健康志向で塩分量とか気にするからさ...｣
小皿に少しだけ移したポトフのスープ部分を2人で味見する。
何だかマネージャー時代を思い出してしまう光景だ。
｢懐かしい、合宿の当番制｣
｢ふふ、作る人によってちょっと味の癖が出てたよね｣
大丈夫、佐曽塚の記憶の全てが壊れたわけじゃない。その事実は嬉しいけれど、無理に言い聞かせるようにその思考に至る自分に少し嫌気が差した。
｢天野のはソースの味が強くてさ〜、早乙女のは甘いの!! 白鳥のは海外のスパイス味が強烈でー、八木原のは激辛!!｣
｢そうそう、成...水神矢のは何だか一味多いのよね｣
｢みずかみや？｣
｢...ううん、なんでもない｣
｢?｣
あまりにも十数年前の記憶が愛おしく、ぽろっと口に出してしまったその単語は、今の佐曽塚にとってどう受け止められているのか分からない。
｢ふんふふ〜んっ、ぽ〜とふっ♪｣
私の心労を余所に、彼は楽しく料理を作っている。それが何よりも安心材料で、幸福なのかもしれない。
｢パンと合わせて作ったトマトのブルスケッタ、牛肉のタリアータ、野菜をじっくり煮込んだポトフ......うん、上出来じゃない!!｣
｢Aの教え方が上手なんだよ〜、いただきまぁす｣
ダイニングに並べられたディナーを美味しそうに頬張る。うんうん、ニコニコしながら咀嚼をして可愛らしい。
｢......A｣
｢ん、どうしたの?｣
｢ありがとう、ございます｣
｢えっ急に何?! 体調悪い?!｣
｢ちがうよ!! そういうことじゃ......なくて｣
口元に運びかけていたスプーンをそっと器に戻し、カチリという小さな音が響いた。
｢Aが、俺の特効薬みたい｣
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35錠目:『光陰スペクトルマグナの如し』→←33錠目:『容量・用法お守り下さい』
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星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
