22錠目:『ノンレム睡眠 feat.午後出勤』 ページ21
_
｢ふぁ〜...｣
｢やっぱもうひと眠りすりゃいいんじゃねぇの?｣
｢...Aを起こしちゃうの、かわいそうだし｣
｢.....大丈夫だろ、多分｣
先程のAがフラッシュバックする。
彼女の体温、静かな寝息、細く白い腕。あの時、俺の行動は正しかったのだろうか。
もし俺の理性が崩壊して、一線を越えようとしていたら?
Aは俺を恋愛対象として見てくれるか? 軽蔑するか? 10年の片想いの結末は、どうなるんだ?
｢...ッ佐曽塚!! お茶でも飲むか?!｣
｢ん〜? ...うん、飲む......｣
疚しさをかき消すように如何にもな理由を付け立ち上がり緑茶を淹れ、テーブルに置いた。
朝のテレビ番組を適当に流し観ていると、さっき閲覧したネットニュースと同じような内容に退屈さを覚え、硬めのソファにだらしなく腰掛ける。
佐曽塚はクッションを抱き、今にも寝落ちてしまいそうだ。
ふとテレビに目を向けると、コーナーが切り替わり、新人アナウンサーが都心に開店した飲食店のイチオシ料理を食レポしている。
いや油使いすぎだろ、とか野菜のバランスおかしくね? とか冷静な分析をしつつ、俺も誘われるように目を閉じた。
_
｢もうプロ級じゃねぇかこの朝食.....!!｣
｢おいしい〜｣
俺と佐曽塚が再び目を覚ました時、テーブルには程よく焼かれたホッケ、大根とクレソンの茎の味噌汁に野菜サラダが並べられていた。
｢嬉しい!!今日は寝覚めが良かったから、凄く調子がいいの!!｣
｢お前な!! 問題は寝相だろ!! その、あの.....“抱き枕的アレ”をどうにかしろよ!!｣
｢抱き枕的アレ? なにそれ、今日起きた時珍しくちゃんとタオルケット掛かってたんだから!!｣
それは俺が、と言いかけたところで口を噤んだ。
その後は各々準備し俺は職場へ向かい、佐曽塚は運良く即日予約出来たらしく鬼道さんと水神矢の勤める病院先で精密検査をするようだ。
当然だがAはその付き添いで佐曽塚と行動を共にする。
｢んじゃ、なんかあったら連絡しろよ。水神矢みたいに頼もしくはねえけど｣
｢.....ありがと、折緒｣
｢うん!! 今度また晩酌しようね!!｣
｢ふは、昼前から酒の話すんな｣
笑いながら軽く手を振り俺は駅へ、2人は駐車場へと踵を返す。
何だか水神矢と言い佐曽塚と言い、Aは俺以外の男性が隣に立っている方がより綺麗に見えた。
いつからこんな劣等感を抱くようになってしまったんだろう。
そんな思いを払拭するように、俺はポケットに手を突っ込んだ。
_
23錠目:『男、騒音、カウンターにて』→←21錠目:『勘違いとカンパニュラ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
