1錠目:『無糖ブラックにミルクを入れたい』 ページ1
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｢佐曽塚君、この資料の整理お願い出来る？」
｢はい」
｢佐曽塚〜、ここエラー出てンぞ、修正!!｣
｢……はい」
この部分は先輩の担当なんだけどなあ、と思いつつも渋々PCと向き合い、該当箇所を修正する。
入社1年目の時、就職活動の時は感じなかった異様な雰囲気に、必要以上に勘のいい俺は察した。
所謂、黒い企業なんだろうと。
適当に軽食を食べ、休む暇無く働き続ける。
不思議ともう既に疲れや暑さ、寒さなどの感覚は機能しなくなっていた。
｢はい皆さん、タイムカード押したら再び業務を続けてくださいね」
20時過ぎ、俺たちの業務は『終わったこと』になった。
しかしその後何時間残業をしたところで、俺の給料は上がることは無い。
｢佐曽塚も、よくやるよねえ。気力と体力あるよ、運動部だった?」
｢……にゃはは、生まれつきですよ。どうしたんですか急に」
そう返事をする。
懐かしく、遠い遠い思い出の星章学園サッカー部にいたことをひた隠しにした。
今ここであの輝かしい青春を思い出したら、俺はきっと自壊してしまう。
｢俺、今月でこの会社辞めるよ」
｢そう……、ですか」
一番信頼していた、俺に雑用を押し付けるなんてことをしない先輩から出た言葉だった。
もう外は真っ暗だ。
先輩の表情は虚ろで、初めて出会った時よりも痩せてしまったように思える。
机の上に散らかった書類を素早く纏め整え、ふうと息を吐いた。
｢お前も早くこんなところから、逃げるんだぞ」
｢尽力します」
それが出来ていれば、なあ。
それから2週間が経ち、遂に先輩がここを去る日がやって来た。
｢佐曽塚、俺とお前、どっちの方が幸せになれるか競争だ｣
｢先輩と競い合いたくないです」
｢こういう時は素直に返事すんの、な?」
｢……尽力します」
｢幸せになるぞ、俺ら」
月末締めで先輩は言葉通りに会社を辞め、俺の隣は寂しげに空席となった。
今日も、4時間睡眠の体に鞭を打ち、業務に徹する。同期もまた何人か退職届を出したという話を聞いた。
視界が霞んで、画面がよく見えない。
｢んぁれ、おっかしいな」
そんな1日だった。
23時、疲労困憊状態で会社を出る。
歩道を見ると、あの時の先輩や俺と同じような顔をした人、酒の力を借りて限界突破、あるいは嘔吐している人が溢れ返っていた。
最初はそんな光景に嫌気が差して堪らなかったのに、この程度の街の状況に慣れてしまった俺が居た。
幸せって、何だっけ。
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星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
