73話 ページ32
そう言って私を見下ろす村上くんを見上げた時、見上げた顔に既視感があった。
いつも、こんな優しい顔で舞子ちゃんも私を見下ろしていた。
これがあるから舞子ちゃんのそばにいたかったの。
この目の優しさを、温かさを、私はずっと。
一歩離れようとした村上くんに気づいたから、二歩詰め寄ってその背中に手を回してみた。
「ちょ、え、え！？」
村上くんが慌てふためく声が聞こえて、いつもの彼だなぁなんて笑いが溢れる。
「分かったよ。村上くんも舞子ちゃんも私のことを大事に思ってくれていたってこと」
「え‥‥‥ありが、とう？」
「私ね、恋とかしたことないからよく分からないんだけど。どうやら優しい人がタイプみたい」
「へぇ、そうなんだ‥‥‥」
「だから、これからも優しく教えてね。何も分からない私に。‥‥‥恋と愛の違いとか」
「え、っと。それは」
「‥‥‥知ってみたいと思えたから。村上くんとなら」
‥‥‥ちょっと大胆すぎたかもしれない。
ふと冷静に返ってしまって体を離そうとしたけど背中に大きな手が回ってぎゅーっと抱きしめてきたから身動きが取れなくなった。
「‥‥‥‥ふふっ、うん。じゃあ教えてあげるね！手始めに苗字呼びと名前呼びの威力の違いから」
「え？」
「俺の下の名前知ってる？」
「うん、知ってる‥‥‥」
「じゃあ呼んでみてよ。せーのラ？」
「ラ、ウールくん‥‥‥」
「‥‥‥はは、ダメだ。これ俺が教えられちゃってるね」
そう言って顔を赤く染め上げた村上くんは私を見てキラキラと笑って、何度も深く頷いている。
「‥‥‥うん。やっぱり」
「やっぱり俺の彼女って世界一可愛い」
【今日もカノジョは世界一可愛い！Fin】
終わり
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
