71話 ページ30
空き教室に入って扉を閉めた途端、静かな空間が広がった。お互いに無言の時間が流れる。
このままじゃ何も進まない。
そう思って私から切り出した。
「‥‥どうして、女の子の格好をしていたの？」
「‥‥‥えっと」
「そういう、趣味とか？あ。心は女の子、」
「違う。‥‥‥罰ゲームで」
心は女の子、だったらこれからも友達でいられたのに。
少し不謹慎かもしれないけどそんなことを思ってしまった。
村上くんの返事に落ち込みそうな気持ちを奮い立たせる。
「そうなんだね。‥‥どんな罰ゲーム？」
「‥‥女の子の姿でナンパされるまで、待つっていう」
「、そうなんだ」
じゃああの時村上くんは罰ゲームであそこに立っていて、ナンパを待っていて、たまたまそこにいたのが私で、ちょうど良くてとりあえず合わせてくれて、その後友達に報告したりしたのかな。
そっか、そっか‥‥‥。
「‥‥‥最低だね」
ポロリと溢れてしまった私の言葉に村上くんが酷く傷ついた表情をした。
その顔を見て自分の発言に気づく。
「あ、ごめ、ごめんなさい。私に責める資格ないのに。だって私が勝手に舞い上がって、友達になってとか言って。村上くんはそれに付き合ってくれただけだもんね」
「ごめんなさい。本当は‥‥‥お礼を言いたかったのに」
「‥‥‥え？」
私の言葉に村上くんが驚いた顔をしている。
全く予想していなかったのだろう。
まさかお礼を言われるなんて。
「最初は確かに傷ついたけど‥‥‥でも思ったの。私が舞子ちゃんと一緒にいて感じたものは嘘にならないって」
「‥‥‥‥」
「たくさん思い出をくれて、友達って存在の楽しさを教えてくれて。感謝しています‥‥‥ありがとう」
舞子ちゃんと一緒にいて楽しかった思い出だけを大事にしたい。それ以外のことは無かったことにしてもう忘れよう。
だから舞子ちゃんに残す最後の言葉として、私はお礼を伝えたかった。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
