今日もカノジョは世界一可愛い！2【Raul】 (ページ28)

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69話ページ28

ブーーーーー

舞台の準備を終えた今、開演のブザーが鳴った。

観客はというと昨日の評判に加え村上くんが主役をやるということで昨日以上の集まりを見せている。

私は照明係として、ステージをよく見晴らせる2階から舞台を見つめていた。

"ふふ、綺麗なお花。まぁ、こんなところにも"

"きっとなにもかも上手くいくわ"

"とても美味しそうなりんごね。お一ついただいてもいいかしら？"

"彼みたいな人はどこにもいないの"

一つのセリフに表情をくるくると変えて可憐に微笑む様子は本当のお姫様のようで観客も見惚れている。
やっぱり舞子ちゃんは、世界一可愛い。

そして台本のまま物語は進み、いよいよクライマックスの口づけのシーンになる。

練習した通り照明のタイミングを切り替えると真ん中にスポットが当たった。

そこにいるのは見目麗しい王子様とその腕に抱かれる世界一美しい白雪姫だ。

ゆっくりと瞼が開いて白雪姫が口を開く。

「ずっと待ってたんだよ。君が見つけてくれるのを」

その時、舞子ちゃんが私を見たような気がした。

「ちょ、あいつセリフ間違えてるって」

周りの裏方の生徒たちがそう笑って舞台を見下ろしていたけど、私にはそう思えなかった。

　

‥‥‥どういう意味？見つけたって、見つけてもらったのは。

‥‥‥私の方だったのに。

その途端に舞子ちゃんとの出会いから終わりまでの色々な思い出がぶわっと溢れ出して目頭が熱くなる。

おかしいよ。こんなところで泣くなんて。

頭では分かりきっているのに涙が止まらなかった。
舞台中だから真っ暗だったのが不幸中の幸いだ。

"そして白雪姫と王子様は末長く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし"

その言葉を最後に緞帳が下がってどんどん舞台上の姿が見えなくなる。

そして会場内の明かりが全て付いてすぐ私は体育館を飛び出した。