67話 ページ26
「あ！A〜」
「亮平くん！ごめんね‥‥‥！」
教室まで走っていくと扉前に亮平くんが立っていて、私を見つけるとひらひらと手を振ってくれた。
「亮平くん‥‥ごめんね。ここまで来てくれたのに一緒に回れないなんて」
「ううん、トラブルがあったなら仕方ないよね。何があったの？」
「‥‥主役の人が今日来れなくなっちゃって」
「え！？それ本番出来るの‥‥？」
「うん！凄いんだよ。台詞覚えてるから代役やるよって言ってくれた子がいて」
「何とかなりそうなら良かったけど」
「‥‥‥‥あ、ほら！前に話した村上くん。彼が今日代役で白雪姫をやるの」
「へぇ‥‥‥‥そうなんだ。楽しみにしてるね！」
心配までしてくれた上にそんな言葉まで掛けてくれるなんて、なんて優しいんだろう。
亮平くんの優しさにジーンとしていると、そのまま差し入れを渡してくれた。
「はい！これ。もしかしたら数足りないかもしれないけど、その時はこめんね」
「うわぁ、ありがとう！！みんな喜ぶと思う。‥‥‥頑張って渡すね」
「はは、がんばれがんばれ」
亮平くんがポンポンと私の頭を撫でる。
そのまますぐ戻ろうとしたら亮平くんが思い出したようにポケットに手を突っ込んだ。
「あ、そうだ！さっきね、実は教室に入っちゃったんだけど‥‥‥これ」
その手には携帯が握られている。‥‥‥誰のだろう。
「一応貴重品だから置きっぱなしも危ないかと思って。誰のか分からないんだけど渡しておいて？」
「ありがとう！ちょっと聞いてみるね」
どこかに目印になりそうなものがないか見てみたけど、シンプルなケースでかつ多くの人が持っている機種は、あいにく所有者の特定につながりそうにない。
すると誤って電源が付いてしまった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥え？」
「‥‥A？どうしたの？」
「‥‥‥‥‥ううん。何でもない」
「ねぇ、顔色悪いよ？休んだ方が」
「何でもないから。‥‥じゃあ、私行くね？差し入れありがとう」
携帯を握りしめて教室を後にする。
どうして？どうしてどうしてどうして。
教室から離れて静かな場所でもう一度携帯の画面を確認する。
AA
『おはよう！今日で文化祭2日目✌️明日よりめいいっぱい楽しもうって決めてるの』
『でも舞子ちゃんと一緒だったら絶対何倍も楽しいんだろうな。来年は一緒に回れますように！』
何度見てもそれは、私が舞子ちゃんに送ったはずのメッセージだった。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
