50話 ページ9
頑張って笑ってそう言った、はず。
だけど私の顔をしばらく見たかと思えば村上くんが突然吹き出した。
「ぷっ、はは！ちょっとAさん顔が怖くなっちゃってるよ。ごめんね‥‥ふっ」
「‥‥‥そんな、笑わなくても」
「ふふっ、ごめんね？そんな顔初めて見たから。新鮮で」
「‥‥‥ふっ」
ずっと楽しそうにしている村上くんを見ていたらそんなに面白かったのかな、ってつられてしまった。
少し吹き出してしまった私を見て、反対に村上くんの笑いが止まった。
「‥‥‥‥うん。やっぱり笑ってた方がいいよ。Aさんには笑顔でいてほしいな、俺」
‥‥‥‥"やっぱり"って言葉が引っかかってまた上手く笑えなくなってしまう。まるで以前にも私の笑顔を見たことがあるような？
「‥‥‥頑張ります」そう返してもう一度深くお辞儀をしてから私はその場から去った。
「A〜ちょっとわからない問題あってさ‥‥‥あ、ごめん。今大丈夫だった？」
「あ、うん。今‥‥‥大丈夫！」
「本当？‥‥‥そしたら英語で分からないところあってさ」
亮平くんが部屋に入ってきて部屋の真ん中にあるローテーブルに座り込んだ。私も同じように隣に座って教科書を覗く。
「どれ〜？亮平くんに分からない問題私に分かるかな」
「何言ってんの。文系科目はAの方が得意でしょ？」
「同じ学校の子に教えて貰えば良いのに」
「A以上に賢い子なんていない」
亮平くんがまっすぐ私を見て言うからその視線から目を逸らして教科書を見つめ直す。
私が少し教えたら理解が速い亮平くんはすぐに問題を解き始めた。それを横目に私は携帯の画面をまた見直した。
「‥‥‥また、舞子ちゃん？」
「え？」
「LINEしてたんじゃないの？」
「‥‥‥‥わかってたのに聞いてきたんだ」
「もう、辞めときなよ。‥‥‥返信来てないんでしょ？」
私より背が高いはずの亮平くんが上目遣いで私を見つめてそう言ったから改めてLINEを確認する。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
