46話 ページ5
放課後、文化祭実行委員の集まりがある教室へ1人で向かう。‥‥‥岩本くんに声をかけて一緒に向かうような勇気は持ち合わせていない。
教室に入ると実行委員に選出された生徒たちが結構集まっていて、みんなこれから待つお祭りを想像して既にテンションが上がっていた。
何人か去年同じクラスだった人やそうではない人にも声をかけられて、それらに無難に返事をしながら自分の席を確認する。
席に着いて岩本くんを待っていると隣に人が立つ気配がした。
「‥‥‥どうも」
‥‥‥‥村上くん？岩本くんはどうしたんだろう。
今日用事があって来れなくなってしまった、とか？
周りの生徒が突然の村上くんの登場に沸き立つ中、私は困惑しつつ村上くんを見つめていた。
何も聞けないまま黙って見上げていると村上くんが静かに隣の席に座った。
「岩本くん、ダンス習っててさ」
「‥‥‥へぇ」
「その習い事が今結構忙しいんだって。
だから代わってくれ、って言われて」
「‥‥‥‥うん」
「だから‥‥‥‥‥‥‥‥ごめんね」
さっきまで普通に話していたかと思えば突然謝られた。
本人は大きな背中をキューっと丸めてすごく申し訳なさそうだけど理由が分からない。
「‥‥‥どうして謝るの？」
「え、俺が一緒なんて嫌だよなって」
「‥‥‥えと、どうしてそう思ったんだろう」
「どうしてって‥‥‥‥‥‥‥あ、いや。なんでだろ」
私が聞いたんだけどなぁ？
村上くんは何かを答えようとして‥‥‥突然迷子になったような、そんな顔をして止まってしまった。
「‥‥‥村上くんのこと、嫌いとかない」
「‥‥‥へ？」
「だから、大丈夫。よろしく」
誰が相手だって私にとっては変わらないから、それだけ頑張って伝えた。それに実行委員同士で連携してやっていけなかったらこれから困るだろう。ここは誤解がないように伝えておくのが吉。
「‥‥‥へへ、うん。よろしく」
村上くんがほっとしたように笑った。
大人っぽい見た目に反して、笑った顔は子供みたいでそれだけは悪くないと思った。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月23日 11時
