39話 ページ39
「おはよう〜ねぇ真っ黒じゃん！」
「違うの、部活でさー‥‥‥」
「その髪色いいね」
「うそ、結構わかっちゃう？」
「おはよう！おはよう〜」
「おはようございまーす」
夏休み明け久々の再会をみんな喜んで思い出を語り合う口が止まらない。
まだ夏休みを引きずるような高揚した空気感が学校中に漂うのを横目に、私は一人で教室まで向かった。
「Aさんおはよう‥‥！」
「おはよう〜」
「おはよう、ございます‥‥‥」
「相変わらず可愛いよなぁ」
「な、それで鉄仮面も相変わらず」
「馬鹿、それも良いんじゃん！！」
教室に入って音を立てないように自分の席に着く。
教室中浮かれていて私だけが取り残されたみたい。
‥‥‥私にだって楽しい思い出はあったの。
ただ、その相手とは縁が切れてしまいそうなだけで。
携帯を確認してみるけど相変わらず何の通知も来ていなかった。
すると廊下が少し騒がしくなってきて女の子たちの歓声、悲鳴？が近づく気配がする。
‥‥‥‥‥もう来たのかな、あの4人が。
「おはよう」
「おはよ‥‥‥」
「おぉ、おはよう！お前ら相変わらずだな〜‥‥‥ラウールなんかあった？」
「あぁ‥‥ちょっとそっとしといてやって？」
理系クラスの岩本くんと村上くん。
文系クラスの渡辺くんと向井くん。
この4人の名前は男性が苦手な私の耳にも嫌でも入ってくる。
見た目が整っているから女子人気が高くて、さながらアイドル的な人気が学内であった。
でも私のクラスに一歩入ってしまえば女子は私だけだし、他の男子生徒は平等に扱っているからその人気もそこまで影響していない。
始業式を終えて帰りのHR。
始業式後の学年集会で早速受験の話を聞かされ、夏休み明けの浮かれた雰囲気が少し沈んだ教室で担任の先生がさらりと言った。
「はい、じゃあ明日席替えするから。後ろのロッカーに荷物散らかしてるやつは片付けておくように。以上！」
「え〜〜〜マジかよ！！！」
「よっしゃ席替えだあ！！！！」
男子たちの雄叫びのような歓声が教室中に響いて頭がクラクラする。
どの席になっても誰とも話さないことに変わりはないけど、少しでも穏やかな人が隣になりますように‥‥‥と今から祈っておく。
そうして挨拶以外では一言も話さないまま2学期の初日が終わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Haniko | 作成日時：2022年11月6日 13時
