67話 ページ23
私は佐久間に振られたらその後どうしようって、地元に帰って元通りの関係になれるかなって不安だった。
でも、佐久間が結婚する時。子供が産まれた時。夢が叶った時。
そんな時に友達としてでも佐久間の幸せを願える存在でありたい。
そんな風に未来のことを考えていたから。
そこに佐久間がいないなんて1ミリも想像していなかった。
私の未来に佐久間がいないなんて、本当に想像していなかったんだよ。
「‥‥‥落ち着いた？」
「‥‥‥‥ありがとう」
「‥‥‥‥‥佐久間からAちゃんが抜け出したって相談と一緒に、病気のことも知らされて」
「そう、だったんだね」
よく見たら照くんの目も真っ赤に充血していた。
そうだよね、友達が死ぬなんて普通で居られるわけがない。
なのに、私のために平常心を装って慰めてくれて感謝しかなかった。
照くんがふと夜空を見上げた。
私もつられるように空を見上げる。
静かに照くんが口を開いた。
「‥‥‥ここってね、夏になると日照時間が一番長いんだって」
「‥‥‥‥そうなんだ」
「一番太陽が早く出てきて、一番遅く沈む。
昼間が長いとさ、1日も長く思えるよね」
「そう、だね」
「‥‥‥‥佐久間もさ、1分1秒でも長く生きたいって思ったから、ここに来たのかな」
「‥‥ダーツで決めたってふざけてたよ」
「はは、だよな。‥‥あいつがそこまで考える訳ねぇわ」
そう笑いながら照くんは静かに涙を零した。
一筋落ちた涙が流れ星みたいで、このまま願い事が叶えばいいのに。なんて。
いつまで他力本願なんだか。
「Aちゃん、そばに居てあげてね。キツいこと言ってるのは分かってるけど」
「‥‥‥照くん」
「友達とか、恋人とか。そんな枠組みどうでもよくて、佐久間にとって一番大事な人がAちゃんであることは間違いないから。佐久間の大事な人としてそばに居てあげてほしい」
「‥‥‥‥私、帰るね」
「Aちゃん」
「照くん、ありがとう。おやすみなさい」
「‥‥‥おやすみ」
自転車を漕いで帰路に着こうとした。
照くんの言葉と佐久間の言葉が私の脳内で交錯する。
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年10月27日 18時
