60話 ページ16
「‥‥‥佐久間」
「あ、ごめんごめん。えっと、」
「観覧車。楽しんでね！」
「‥‥‥あ」
「じゃあ、また下で会おう」
そう言って扉を閉めてもらう。
扉の向こうの佐久間は取り残されたようにポカンとした表情を浮かべていた。
残った2人はどんな会話をして、どんなやり取りをするだろう。由依ちゃんから佐久間に告白しちゃったりして。
ダメだよ。こういうのは男から言わなきゃね、佐久間。
「‥‥‥Aちゃん」
「‥‥ん。あ、ごめん！なんか言ってた？ラウールくん」
「‥‥‥はぁ、そんな顔するなら応援なんかしなきゃいいのに」
「‥‥‥なんの話だろう」
「んー？Aちゃんが本当はさっくんのこと好きでー、でもどうせ関係性崩したくないとかで応援するふりして気持ち隠してるって話」
「そんな意地の悪い言い方止めろよ」
「でも照くんだってそう思ったでしょ？だから僕らはちょっと反対だったの！こんなのAちゃん絶対辛いに決まってるじゃん」
「‥‥‥‥佐久間の幸せをいちばん近くで見てたいだけだよ」
「そんなの、いつも見てんじゃん」
「え？どういう意味」
「ラウール」
「‥‥‥」
「ダメ。こっからは2人が考えなきゃいけないことだろ？」
佐久間に対して2人が気づいていて私が気づいていないもの。
さっきの照くんとの会話といいことごとく私は佐久間について気づいてないことが多いのだと落ち込んでしまう。
「‥‥‥僕らから言えるのは、そんなに考えすぎなくていいんじゃないかってこと。2人の過ごしてきた時間は確かなものなんだから、ちょっとAちゃんが素直になったくらいで2人の関係は崩れないよ」
ラウールくんがこれならどうだ？って感じで挑戦的に照くんを見ている。
「‥‥‥Aちゃんは俺たちよりずっと長く佐久間のことを見てきてるんだから、Aちゃんが見たものを信じたらいいと思うよ」
照くんの言葉に私は今までの佐久間を思い返してみた。
突然私の前に現れたピンク髪の佐久間
アイスの棒1本で恩返しがしたいんだって
夏祭りに絆創膏を貼ってくれた
いきなり北海道に連れてきて
照くんにラウールくんに由依ちゃん
佐久間が沢山の輪を広げてくれた
1人だった私の世界を佐久間が広げてくれた
どんな時も私を置いていかずに
どんな時も私のことを考えて
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作者名：Haniko | 作成日時：2022年10月27日 18時
