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レジで会計を済ませ、私は足早にスーパーを後にした。
家までは5分もかからない。その道を早歩きで通り去る。
いつもなら登るのすら億劫な錆びた階段も 一段飛ばしにする勢いで駆け登り
206号室を乱暴に開け放った。
家の扉を閉めた瞬間、溢れ出たのは涙じゃなかった。
ここでしおらしく涙でも流せば可愛げもあったかもしれない。
けれど、私から勢いよく溢れ出たのは怒りに似た感情だった。
何に怒っているのか、もう分からなかった。
怒っているのかさえ、よく分からなかった。
ただ、蛇口を捻ったように流れ出す言葉を止めようがなかった。
｢あんたは悪魔で、私を不幸にするためにいるんでしょ？何年も‥‥何年も‥‥ずっとそうだったのに｣
｢‥‥｣
｢どうして今更訳の分からないことをするの？私をどうしたいの？｣
｢‥‥｣
｢私は今までと変わらずに居られたらそれでいいのに｣
｢‥‥｣
｢どうして変わろうとするの？どうしてあんな顔で笑うの？｣
玄関先で怒鳴る私を、もう自分ですら止めることはできなかった。
Vはどこか冷ややかな目線を向け、黙ったままだった。
｢何があんたをそうするの？｣
悪魔は憤怒する私を憐れむように笑ってこう言った。
｢分かってるくせに｣
頭の先に熱い血が集まる。
どこまでも話にならない。こんなの、もう嫌だ。
要領を得ない返答も、読めない感情も、見えない未来も、
何より、こんな風に乱れる自分自身も
｢うるさい！｣
持てる全ての力を込めて
恋しくてたまらない私の悪魔の胸に拳を振り下ろした。
どん、と鈍い音がした 瞬間後悔した。
見上げると悪魔は今までで一番、幸せそうに笑っていた。
｢A、もう少し奥まで来ていいよ｣
そう言うと、
悪魔は自分に振り下ろされた私の拳を両手で押し込んだ。
どぷん、と重たい泥の中へ落ちたような音がした。
熱いような、冷たいような悪魔の胸の中は知りたくなかったことをはっきりと私に教えた。
やっぱり、悪魔なんて、私の想像でしかないんだ。
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K(プロフ) - 🇰🇷💜さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまって申し訳ございません。本当に嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2022年1月28日 11時) (
レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
🇰🇷💜 - めっっっっっっちゃいい話しです！最後泣いてしまいました｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2021年12月28日 18時) (レス) @page30 id: 1c3d5c9a9d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» 2度目のコメント、本当にありがとうございます。読み返すと結末を知っている分、別の見え方がすればいいなと思って書いたので 読み返していただけて本当に嬉しいです。温かいお言葉を本当にありがとうございます、とてもとても嬉しいです。 (2021年10月12日 21時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
とりむねにく(プロフ) - 2度目のコメントです。もう何度もこのお話を繰り返し読んでいます。読むたびに胸が苦しくて、でも未来あるヒロインのこれからに少しの暖かさを感じて何度も泣いてしまいます。うまく言葉に言い表せないのですが、私にとって凄く大切なお話です。ありがとうございます (2021年10月12日 20時) (レス) @page16 id: 69a1b6ff8d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» コメントのありがとうございます！凄く嬉しいです、本当にありがとうございます。これからもじわじわと色んなお話を書きたいなと思っていますのでよろしければご覧頂けると幸いです！ (2021年10月9日 7時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2021年9月27日 14時
