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｢あ‥‥うん｣
たじろぐ私の背中をVが支える。
支えるというより後ろに一歩も引かせないように突っぱねたような形だった。
逃げ場はないぞ、と囁かれているように感じてチラリと悪魔を盗み見たが それはどこか優しい笑顔を向けていた。
｢Aちゃんの家はこの辺なの？
私はちょっと遠いからここは初めてなんだけど｣
はつらつとした口調で話す彼女を見て、まさかそれが自分に向けられている言葉だとは信じ難かった。
しかし間違いなく私との会話を楽しもうとしている？いや、それともどこかで陥れようとしている？嘲笑える機会を伺ってる？
彼女はきっとそんな人じゃない。
つい昨日の、雨に濡れる白いシャツを思い出した。
そう、彼のように。
混乱した胸の内の一方で、頭の中はどこか落ち着いていた。
｢うん、家が近くなの
お腹がすいたからご飯買いに来てたんだ｣
手にしたままの弁当と水を少し上に持ち上げながら返答する。
言葉はスラスラと出てくる。
彼女は一瞬驚いた顔をして、またにっこりと笑った。
｢そうなんだ
何だか今まであんまり話せてなかったよね
もう少ししか一緒に学校通えないし‥‥また学校でも話そうね｣
｢うん、そうだね｣
それじゃあ、また学校で と言いながら彼女は去っていった。
じんんりと汗をかいていた筈の背中は乾いていた。
その代わりに、頬が高揚するような皮膚がザワつくような 不思議な感覚だった。
｢A｣
｢うん、レジ並ぼっか｣
Vに急かされたと思い、レジに向かって歩き出したが
後ろの方でVが何か言ったような気がして立ち止まった。
｢どうしたの？｣
後ろを振り向くと
悪魔はとても寂しそうに笑っていた。
眉を下げ、真っ赤な唇の端を緩やかに上げて。
感情の読めないその顔を見て、私は咄嗟に悪魔に駆け寄った。
｢ど、うして‥‥そんな顔‥‥｣
｢誇らしくてさ｣
理由は分からないが今すぐ触れなくてはならないと思い、持ったままの商品を近くの棚に置き、Vの頬に手を添えた。
｢どういう意味‥‥？｣
悪魔はそっと私の手を自分の手で包み頬から離し、
｢大丈夫
まだ大丈夫｣
そう呟いて
さ、レジに行こう といつもの様子で私の手を引いた。
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K(プロフ) - 🇰🇷💜さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまって申し訳ございません。本当に嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2022年1月28日 11時) (
レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
🇰🇷💜 - めっっっっっっちゃいい話しです！最後泣いてしまいました｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2021年12月28日 18時) (レス) @page30 id: 1c3d5c9a9d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» 2度目のコメント、本当にありがとうございます。読み返すと結末を知っている分、別の見え方がすればいいなと思って書いたので 読み返していただけて本当に嬉しいです。温かいお言葉を本当にありがとうございます、とてもとても嬉しいです。 (2021年10月12日 21時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
とりむねにく(プロフ) - 2度目のコメントです。もう何度もこのお話を繰り返し読んでいます。読むたびに胸が苦しくて、でも未来あるヒロインのこれからに少しの暖かさを感じて何度も泣いてしまいます。うまく言葉に言い表せないのですが、私にとって凄く大切なお話です。ありがとうございます (2021年10月12日 20時) (レス) @page16 id: 69a1b6ff8d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» コメントのありがとうございます！凄く嬉しいです、本当にありがとうございます。これからもじわじわと色んなお話を書きたいなと思っていますのでよろしければご覧頂けると幸いです！ (2021年10月9日 7時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2021年9月27日 14時
