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物心ついた時から私の傍には悪魔がいた。
この世のものとは思えないその風貌はあまりにも美しく、恐ろしい程に現実味がない。
冷たく鋭利な双眸で見つめられるとたちまちそれに従ってしまう。
そう、幼い頃から私に選択肢などなかった。
私というものは
それによって決められ、
それによって裁かれるものだった。
それの名前は V
真っ赤な唇を持った悪魔だ。
Vはいつも退屈そうに私の隣に立っている。
こんなにも鮮明なのに私以外は愚か、鏡やガラス
あらゆる物に映らない。
悪魔であることを差し引いても、Vの容姿は賛美の言葉が見つからないほど美しいので
記録できるものが自分の目と脳しかない事が少し悔やまれる。
｢A、さっきから何｣
｢ごめん｣
ショーケースの並ぶ街中を歩きながらVは目線だけを私に向け問う。
私は前を向いたまま小さな声で謝り、速度を下げることなく歩き続ける。
隣にいるそれは 歩く、というより滑るように移動する。音がしないのだ。
｢不愉快だね、なんだか｣
｢‥‥｣
不愉快、と言い放ちながら喉の奥で笑うそれは足音もしなければ、笑い声もしない。
｢緊張してる？もういい加減慣れなよ｣
ふいに肩に触れる手は無機質な異形のものとは思えないほど体温を有している。
それの言う通り私は緊張している。
歩けば歩くほど近づいてくるあの場所に怯えている。
｢まだ明るい
きっと帰ってきてないよ｣
Vは私の肩を小さく揺らした。
励まそうとでもしているのだろうか。
｢悪魔のくせに｣
｢悪魔だなんて失礼だな｣
Vは尚も喉を鳴らしながら速度を合わせて付いて来る。
もう、記憶にないほど昔から。
私の隣には誰もいない。この悪魔以外は。
腕時計は15時を指している。
息が白くなってくるこの季節 足を早めなければ直ぐにでも暗くなってしまう。
私は何としてでもその前に家に帰らなければならない。
いや、家 というには相応しくないあの場所に。
｢急ぐと良いことは無いよA｣
悪魔の低い声が耳の奥に馴染む。
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K(プロフ) - 🇰🇷💜さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまって申し訳ございません。本当に嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2022年1月28日 11時) (
レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
🇰🇷💜 - めっっっっっっちゃいい話しです！最後泣いてしまいました｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ (2021年12月28日 18時) (レス) @page30 id: 1c3d5c9a9d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» 2度目のコメント、本当にありがとうございます。読み返すと結末を知っている分、別の見え方がすればいいなと思って書いたので 読み返していただけて本当に嬉しいです。温かいお言葉を本当にありがとうございます、とてもとても嬉しいです。 (2021年10月12日 21時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
とりむねにく(プロフ) - 2度目のコメントです。もう何度もこのお話を繰り返し読んでいます。読むたびに胸が苦しくて、でも未来あるヒロインのこれからに少しの暖かさを感じて何度も泣いてしまいます。うまく言葉に言い表せないのですが、私にとって凄く大切なお話です。ありがとうございます (2021年10月12日 20時) (レス) @page16 id: 69a1b6ff8d (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - とりむねにくさん» コメントのありがとうございます！凄く嬉しいです、本当にありがとうございます。これからもじわじわと色んなお話を書きたいなと思っていますのでよろしければご覧頂けると幸いです！ (2021年10月9日 7時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2021年9月27日 14時
