いちばん近くて、いちばん遠い。I【虎】 (ページ11)

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個人レッスンが始まって、1週間が経った。

数曲…出来は完璧とは言えないけど、フリは身についてきたと思う。

振付師さんがいない日は、その前の日にやったところをひとりで復習して、鏡を見ながら細かいところを調整。

ダンスがついていけるようになるまで、Travis Japanさんとの合同レッスンはないし、グループに正式に参加することもない。

ある意味、ここで降りればTravis Japanの人達は喜ぶのかなぁと思ったりもするけど、社長さんからの期待や、××のメンバー達、前マネージャーさんにもらった応援の言葉を蔑ろにしたくないという一心で、ひたすらダンスに打ち込んだ。

A「よし、もういっかい！！」

♬

「ガチャ」

突然、レッスン室のドアが開いた。

？「…こんちわ」

A「あっ、こんにちは、お疲れ様です」

そこには、紛れもなく、Travis Japanの中村海人さんが立っていた。

中村「なにやってんの」

ぶっきらぼうに、問われる。
顔は真顔というか…そこに笑顔はない。

A「今、LockLockのフリの練習してました。Travis Japanさんってやっぱり凄いですね。どの曲もハードで…」

中村「ふーん」

沈黙が、流れる。

そんな態度するぐらいなら、わざわざ聞かなくてもよかったんじゃないかと思ってしまったが、これから長い付き合いになるだろうと思い、口をつぐんだ。

中村「…やめればいいのに」

「！？」

沈黙が破られたと思えば、やめればいいのに…？

A「どういうことですか？」

中村「だから、やめればいいのにっつたの。今やめたら、Travis Japan入らなくて済むじゃん。××にもど…れるのかは俺にはよくわかんないけど、」

A「私はTravis Japanに入る覚悟を決めて、××をやめたんです。今更後には引けません。」

食い気味に否定する。少し意地を張ってしまったか。
いや、ここで負けたらダメだ。

中村「でも俺たちは誰もお前のことなんて求めてないよ。俺らは7人がいいの」

A「その気持ちは、察してます。今は私のことが邪魔で邪魔でたまらないんだろうなって思ってます。でも、たくさん努力して、早くTravis Japanさんに追いついて、その気持ちを覆すつもりです。」

中村「なんかえらそーだね」

…偉そうなのはそっちなんじゃないか。

中村「ま、いいけど。すきにすれば」

突然やってきたと思ったら、突然去ろうとする。
どんだけ自由な人なんだ。

なんかやだなぁ、と思いつつも、練習を再開した。

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