初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ50)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:94,548 hit

きっかけとはページ50

.

「心配ないよ。ここんところ色々考えることが多いだけ」
「そう……？愚痴聞くくらいならできるから、気が向いたら話してほしいかな」
「ありがと。Aの心の負担にならない程度の愚痴なら、そのうちお願いしようかな」
「ふふ、うんっ。いつでも聞くよ」

ごめんね、俺がしっかりしてないからAに気を使わせちゃってるんだよな。

コーラを飲みながらふわふわ笑うAを見つめた。

数日後。

「どーした？なんか元気がないね、テヒョンア？」

困惑を持て余した俺がリビングのソファに寝転がって悶々と考えすぎていると、ゲストルームにいた我らが長がひょこっと顔を出した。

そう言えばヒョンってどんなプロポーズしたんだろう。
ちょっと気になって尋ねてみた。

「ヒョンのプロポーズって、どんなでしたっけ？」
「え、僕の？
　僕は記念日を祝うために全権力フル活用して、予約が一番取れない高級ホテルのロイヤルスイートを押さえて、ディナーの後のちょっとした流れで？」
「どんだけ職権乱用したら気が済むんだ、このヒョンは」

一族の長が聞いて呆れるわい。

「プロポーズするつもりで計画立ててたんですか？」
「いや。その当時は何となく結婚を視野に入れていた頃だったけど、その時はただ看病してくれたお礼がしたかっただけで、プロポーズしよう！とかは思ってなかったんだよな。
　ホント、『流れ』だったんだよ。だからプロポーズ、仕切り直したんだ」
「へぇ……」

権力振りかざせるほど偉くもない俺には到底真似できない所業だな、こりゃ。
でも参考にならなかったわけじゃなく、一つのケースとしていいお手本にはなりそうだった。

「迷いがある？」

ヒョンはどこまでもお見通し。
隠すことも出来ないから素直にタイミングを見失ったと相談してみた。

俺の思うところをとにかく履き出していると、耳を傾けてくれていたヒョンが口を開いた。

「お互いの気持ちがピッタリ同調した時が一番いいんだろうけどさ、それはなかなか難しいと思う。
　結婚を考えるようなきっかけを見つけて、相手がそれを意識し始めたって思えるようなら、ちょっとだけ押してみてもいいんじゃないかと思うけど」
「ふーん……きっかけかぁ」

きっかけねぇ……。