初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ40)

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† それぞれが抱く傷ページ40

SJ side

「実際、父様の話を聞いた時、お前はどう思った？」
「……聞いても怒ったりはしなかったよ。俺も同じことをしてしまうって思ったから。
　無茶苦茶なことしてるって分かってるのに、そう言う行動をとってしまった気持ちが分かっちゃったから」
「そっか……。お前は母様の死の真相を聞いた上で、父様の気持ちの一端を理解したんだね。
　やっぱりAとの出逢いがお前の心を変えたんだ」
「でも、Aがもし俺と一緒にいることを選ばなかったら？離れてしまったら？」
「その時は大切なものを失う心の痛みを乗り越えさせるために、そのまま別れを受け入れさせたと思う。お前が喪失の痛みに耐えられるだけの心の体力を培うことができたかどうか、その時点で推し量ることはできたと思う」

「それにね？僕が救いたかったのはテヒョンイばかりじゃない。お前の父様も救いたかった」
「お父さんも……？」
「もしも僕があのままユンギに真実を語らせていたら。
　父様は癒やされない心の傷を自ら抉って更に深く傷ついて、今度こそ一人きりで“眠り”を選んでしまいそうだった。こいつは僕に迷惑をかけまいとして何でも一人で決めてしまって、滅多に頼ろうなんてしない奴だから」

二人の心と魂に刻まれた愛の深さは、相手が天に帰った後、そのまま傷の深さと変わる。傷が癒やされるために必要な時間と心の準備に必要な時間がどれほど必要なのか、なんてことは予想はできない。必要な時間は人それぞれ。
各々が乗り越えるための心の体力を回復させることと、真実を受け止めるための準備期間が必要だった。

――それと、僕自身が二人に吐いていた嘘を謝罪するための心積もりの時間も欲しかった、って言ったら怒られるかもしれないね。

「二人共、本当に今まですまなかった。記憶を消したと嘘を吐き、母様の死の真相を口止めさせ、テヒョンの心の不安定さが“暗示”のせいだと言わずに隠し続けてきて……」
『ねえ、ひょん……』
「ん？どうしたテヒョン……ア？」

突如、神妙な表情だったテヒョンの気配が変わった。
ヴァンパイアが持つ鋭い気配ではなく、柔らかく軽やかな気配。

無垢な子供のような気配。

彼は、その純粋な目を寂しそうに輝かせていた。