初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ4)

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§ 本当の母の晩年 § ページ4

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――お父さんから初めて聞かされた物語の続きは、あまりに衝撃的すぎた。

お母さんがそんな苦しみを耐えていた事実を聞かされても、俺の記憶の中のお母さんはいつも嬉しそうで楽しそうで、幸せそうな印象しかなくて。

頭の中で一生懸命整理して、自分の記憶とも擦り合わせて随分混乱したけど。

分かったことは、お父さんはお母さんと一緒にいたかったって純粋な気持ちだったんだってこと。

それは、お母さんも同じだったんだって。

「愛してるって言ってあげた？」
「……いつ？」
「お母さんを最期に愛してあげた時」

お父さんはビックリして目を見開いたけど、すぐに苦笑いしてみせた。

「……当たり前だろ。飽きられるほど言ってやったよ」
「ちゃんと優しくしてあげた？」
「ふっ……。んなの、俺達に無理なことくらい分かるだろ？」
「だよね。一番好きな人だもんね」

だって大好きな味の人を喰い尽くしたくなるのが俺達の本性だもん。

「謝ることないよ、お父さん。俺、怒ったりしてない」
「っ……」
「あの時のお父さんは、お母さんを失った悲しみから逃げたかっただけなんだよね？
　今なら分かるから。Aがいる今だから分かるんだ。
　もしAが死んでしまったら、俺だって何もかも捨てて一緒に墓に入って“眠り”を選ぶよ」

「俺もお父さんと同じようにするんだよ。それくらいAが好きだから」

目を見開いたお父さんはサッと顔を伏せて苦しげな顔を見せ、今にも泣き出してしまいそうになりながらもボソボソと話を続けた。

「同情は要らねぇ……。俺はお前の一番好きな者を穢したんだ。もっと怒れよ。ジミニみたいに。
　遠慮なんてせずに全部俺にぶつけてしまえよ」
「お母さん、言ってたよ、お父さんは……お母さんが好きで好きで、もし今居なくなったら、お父さん、寂しすぎて死んじゃうかもって」
「ッ」
「お父さんは私が居ないとダメだからって、お母さんと話してる時に言ってたんだ」
「そんな昔の事、覚えてんのかよ？」
「うん。憶えてるよ。だってお母さんと最後に過ごした日の事だから、忘れたりできないよ」