初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ28)

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闇に沈んでどれくらい経ったかわからないけれど、いつだったか、ジミニのお父さんとお母さんがぼくの部屋にやって来た。
スアぬなが部屋から出ていって、ジミニのお母さんと話をした。

「私のこと、分かる？」
「………………」

声は聞こえていて、誰だかは分かるんだけど声が出てこなくて。

頭の中でなら話せるから、『ジミニのお母さん』って答えたんだけど……。

おかあさんってなんだっけ……？

ぼくにもいたっけ、おかあさん……。

いたよね、おかあさん。

じゃあ、ぼくのおかあさんはどこ？

おとうさんと一緒だった『おかあさんみたいな人形』はどうなったの？

おとうさんはどうなったの？

そんな事を考え始めたら怖くなって息が苦しくなって頭が痛くなってきた。
ぎゅっと心を暗闇に押し付けると闇がそれを全部食べてくれて、目の前が暗闇になって何も感じなくなった。

でも、なんでか闇の中が知っている匂いで暖かくなった。

……おかあさんの……おはなのにおい？

お母さんはやっぱり帰ってきてくれたんだ。
お母さんの匂いのお陰で、暗闇に少し光が差し込んで外が見えるようになって、外の音も聞こえるようになった。

「テヒョン君？」

……でもぼくの目の前には、ぼくのお母さんじゃなくて、ジミニのお母さん。

「テヒョン君のママが作った匂い袋、見つけたよ」

ぼくの手にちっちゃな袋を握らせた。

「……おか……さんの、おはな……。だいすきな、におい……」
「っ！……そう、そうよ。お母さんの……大好きなお花の匂い……よっ」
「うん……ありがと……ジミニのおかあさん」

ジミニのお母さんが見つけてくれたポプリが、ぼくを暗闇から引っ張り出したんだ。

そのすぐ後、ジミニのお母さんと入れ変わりで、男の人がぼくの正面に胡座をかいて言った。

「……テヒョンア、僕が判るかい？」

この優しい声、分かる。この顔、憶えてる。

「……ジニひょん……ジミニの、おとうさん」
「そう、そうだよ。分かるんだね？良かった」

にっこり目が細くなるくらいに笑って、ぼくの頭にそぉっと手を乗せてふわふわっと撫でてくれて。

おいで。って両手を広げたジニひょんに飛びついたら、ぎゅってしてくれて。

そのおっきい体がお父さんみたいで、ほんのちょっとだけどお父さんの匂いがした気がして、心がほわんとしてきて。

涙がいっぱい出た。