初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ26)

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部屋中、白い色がいっぱいで、窓の近くに大きなベッドがあって。そこにいつもお母さんが眠っていたってすぐ思い出した。

ベッドの掛け布団が膨らんでて、傍らに木の棒みたいなものが見えていて、隣でそれに手を重ねて眠っているお父さんがいたんだ。

やった！みーっけ！

「おと……！」

嬉しくて大きな声を出そうとした瞬間、お父さんとの約束を思い出した。

【部屋の中は走るな】

【母さんが寝てても起こすな】

この部屋に入るときのお約束。
だから口をきゅうっと結んでそーっと近づいた。

「おとうさんおとうさん、なんでおかあさんのおへやでねてるの？」

ベッドに近づいたら、木の棒に見えていたものは人の手で。

「……あれ？」

その先にはよく知る人の顔があって、

「なん、で？ど……して？」

それがお母さんだって判ったら急に頭の中がグルグルして。

何故？どうして？でいっぱい。

「おかあさん……おはかの……なかに、はいったよ？」

お母さんは死んだって聞いた。なのに今もここで寝ている。
そしてお父さんも一緒に寝ている。

どうしてお母さんが戻ってきたのか、どうしてお父さんが一緒に居るのかが解らなくて、疑問がぼくの頭の中をぐるぐる回ってパンクしそうになった。

その時のぼくには、お父さんが死んでいるように見えた。

お母さんが帰ってきたのに、今度はお父さんがお母さんのところに行っちゃったって、そう思った。

「おと……さん……」

ぼく、おりこうさんにしなかったからおいてかれたの？

「おとうさん！おとうさん！」

どこにもいかないで！ぼくをひとりぼっちにしないで！

だから叫んだ。
身動き一つしないお父さんに。

「ごめんなさいっ！スアぬなのゆうこと、ちゃんときくから！」

ベッドによじ登って、お父さんの身体をいっぱい揺さぶって叫んだ。

「おとうさんっ！おとうさんっ！おとうさん！おとうさん！おとうさんっ！」

喉が痛くなっても声が嗄れても叫び続けた。

「おきてぇ！おとうさんっ！！」

「しんじゃやだぁぁぁ！おとうさぁぁぁんっ！！」

お父さんの身体を揺らして泣き叫び続けた。