初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ16)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:94,540 hit

　？？ページ16

.

小さい俺は今までずっと一人ぼっちで寂しくて、こんな暗いところで怖い思いを抱えたままだったんだって感じて、本当のことを伝えようと思っていた俺の心がジクジク痛くなる。

『テテ』の顔に手を伸ばすとふわっと柔らかい頬に触れた。

─ お母さんのあったかいものはお母さんからしか貰えない。だけどそのお母さんはもういない。でももうひとりいるじゃない、お母さんと同じくらい、降り注ぐような愛をくれる人 ─

一生懸命考えていた坊主がパッと顔を上げる。
『テテ』は何かに気づいてくれたらしい。

『おとうさん ? 』

─ 大正解。寂しいって気持ち、怖いって気持ち、今度お父さんに伝えよう ?
　お父さんならきっと受け止めてくれる。ちょっと不器用だけど、ちゃんと応えてくれる ─

『そしたら、おかあさん、かえってくる ? 』

─ ううん。それでもお母さんは帰ってこない。一度天に還ってしまったら、こっちには戻ってこれないんだ ─

『てん……おそら?ジニひょんもいってた』

─ うん……。でもね ? もしかしたらお母さんじゃないけど、生まれ変わったお母さんの魂になら会えるかも ─

『うまれかわった……おかあさん…… ? 』

─ だからさ『テテ』? お父さんに見つけてもらおうよ ? 生まれ変わったお母さん ! ─

『おとうさんに ? 』

─ うん、お母さんはお父さんの運命の人だから、お父さんが見つけなきゃ俺達はお母さんには会えないんだ。
　でもさ ? お父さんの運命の人だからこそ、お父さんのほうが俺よりももっとずっと見つけるの、上手なんだよ ? ─

『ほんと ?! 』

嬉しそうな『テテ』の瞳は元の穏やかなブラウンに戻っていて、茨はとっくに闇の海に溶けて消え、その影響を受けて荒れていた深淵は穏やかな姿を取り戻していた。

『じゃ ! おとうさんにおねがいする ! 』

─ よぉし ! その為には『テテ』がちゃんとお母さんとのお約束、守らないとね ? ─

『おやくそく……。
　うん ! おとうさんのいうこときいて、
びょうきにまけないでおりこうさんにする ! 』

─ そうそう。いい子だね、『テテ』 ─

頭を撫でると『テテ』は嬉しそうに屈託なく笑う。

その笑顔には見覚えがあった。

その笑顔は遠い昔、白く輝く世界にいた
お母さんの笑顔によく似ていた。