初めまして、結婚してください！ ⑦ (ページ14)

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─ それは俺がAにそう呼んでってお願いしたからだよ ! ─

『なんでおかあさんじゃないひとにおねがいしたの?!
　おかあさんだけがよんでくれたとくべつなおなまえなのに ! 』

─ ……だからだよ…… ─

『……へ ? 』

─ 大切だからだよ ─

─ 俺の大切な人だから……お母さんが呼んでくれていた特別な名前で呼んで欲しかったんだ ─

その気持ちがなんなのか、幼い『テテ』はまだ気づかない。

『でもおかあさんだよ ! あのおねえちゃん、おかあさんとおんなじあったかいもの、くれたよ ? 』

─ なあ、そのあったかいものって、お父さんからも貰ってきたろ ? ─

『え ? 』

─ ジニヒョンやジミニからも貰ってきたろ ?
　スアヌナや庭師のじいちゃん、メイドさん達やシアちゃんからだって貰ってたろ ? ─

『……でもっ、おかあさんのが……いいもん……』

─ そのあったかいもの、確かにお母さんから一番たくさん貰ってきた。独り占めしたかった。もっともっと、いっぱい欲しかった。
　分かるけど、お母さんが天に還ってしまってそれはもう叶わない。もう貰えない ─

─ でも、お父さんだってくれてただろ ? 同じくらいあったかいもの、くれてただろ ? ─

『でも……おと、さん……おかあ、さん……』

─ お父さんもお母さんも、くれてたものは同じだよ ? それはお前だって分かってるだろ ? ─

茨の鞭の動きが緩んだ。

─ それが大好きって気持ちだって、愛してるって心だって、Aがくれるあったかいものも、それと同じものだって ─

─ 『テテ』はAが好きって気持ちが、お母さんの好きや愛してると似ているけどちょっと違うって、ホントは気付いてるんだろ ? 特別なものだって分かってただろ ? ─

この子は分からない訳じゃない。お母さんがいないことを信じたくないんだ。
怖かったんだよな。寂しかったんだよな。

心が寒くて震えていたんだよな。

お母さんがくれてた『それ』をAから貰おうとしただけなんだ。

だからよく似たAの匂いに母を重ね、Aのあったかい心に触れていくうちに母と同じものだって勘違いしてしまって、Aに『お母さん』を求めたんだ。

それが目の前にいる、『小さな俺』だったんだ。