§ 離れ § ページ14
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温室を後にした俺達は、すぐに離れに移動した。
土で汚れた手のお父さんに代わって、玄関は俺が開けた。
先日は訪れなかった離れ。ここも久しぶりだ。
冷蔵庫とかの家電製品はもうないけれど、テーブルの位置も置いてあるソファも昔のまんま。
カーテンが新しいものに変えられてるくらいで幼い俺とお父さんが過ごしていた頃そのままだ。
定期的にメイド達が手入れをしてくれているお陰で、今でも十分人が住める状態を保ってくれている。
お父さんが洗面台で手を洗って戻ってくると、土が拭き取られ綺麗になった箱を大事そうに持っていた。
二人掛けのダイニングテーブルの真ん中に置かれたその箱を挟み、俺とお父さんとが向かい合って座っている。
ふっと浅い息を吐いたお父さんが重々しく口を開いた。
「テヒョンイは母さんの事、どれくらい覚えてる？」
「えー？何で急に？」
「いいから、聞かせろ」
「ふぅぅぅん……。Aにも前に聞かれて教えたけど、いつもベッドに寝てて、そこで遊んでくれたり話したり抱っこしてくれてたり？」
「……他には？」
「んー？お母さんと約束交わした事と最期の時の顔くらい？それが？」
「母さんがいた場所は？」
「俺の部屋でしょ？昔、お母さんが使ってたっていう──」
俺がそう話すとお父さんが悲痛な顔つきで俯いてしまった。
幼い頃の曖昧な記憶だから、多少の記憶違いはあるだろう。
だからってそんな苦しそうにしなくったって……。
「あの部屋は……、母さんの体調が悪化してからはお前しか使っていない」
俯いたまま呟いたお父さんの声は、やけに震えていた。
「……え？」
「母さんは……あの部屋には戻れなかったんだ」
「戻れなかった？じゃあ、どこかの病院にずっと入院してたの？」
「……いや、ここにいた」
「は？ここ？うちにいたの？」
まさかその場所って……。
「この離れに閉じ込められたまま一生を終えたんだ、あいつは」
お父さんの目線の先にはあの箱。
テーブルの上の箱の蓋を開けたお父さんが、そっと俺の前に差し出した。
見た瞬間、目が熱くなって鼻の奧がツンとする。
中には鍵と古ぼけた小さな袋。
その袋に目が釘付けになった。
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あがしおん(プロフ) - みほんぬさん» みほんぬさんっ！ありがとうございますぅ〜！みほんぬさんのそのお気持ちが刺さります！嬉しいです！そのお気持ちにお答えすべく、ボチボチゆるっと、更新頑張ります♪ (2020年7月23日 23時) (
レス) id: 790268ff01 (このIDを非表示/違反報告)
みほんぬ(プロフ) - 毎度毎度なんていったらいいんでしょう…とにかく泣きましたし、ささります。どうしたら星を赤にできますか…？赤以上はないんですか？あがしおんさん、本当に素敵大好きありがとうございます…！もう伝えるの難しいです笑！それぐらい大好きな作品、シリーズです！ (2020年7月23日 22時) (レス) id: a5cfbeb474 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - ワコさん» コメントありがとうございます！吸血鬼シリーズをお気に召されたそうで！ありがとうございます♪まさか泣かせてしまうとは……！（多少狙ってました）が！ここを乗り切れないとハッピーエンドにはなれません！応援してあげてください〜！ (2020年6月18日 23時) (レス) id: 4017986d72 (このIDを非表示/違反報告)
ワコ(プロフ) - 今回の更新、すごく泣いてしまいました…テテ、がんばれ〜 テテの純粋さとひたむきさに毎度キュンとしています。あがしおんさまの大ファンです。特に吸血鬼のシリーズが大好きで、以前のお話も度々読み返しています。素敵なお話達をありがとうございます！ (2020年6月18日 23時) (レス) id: 0c64578284 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» コメントありがとうございます〜！ジン長いいですか？今回特に出番が多いので、まだまだ頑張ってもらいますのでお楽しみに！（笑）ウィスキー呑めちゃうんですね〜！羨ましい！しかし何ででしょう？もしかして“食後”……？ (2020年6月8日 2時) (レス) id: 991af14bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2020年4月25日 17時
