恋人です ページ20
.
Aへのプレゼントを探すために片っ端から店に入ろうと息巻いていたら、高価なものは困るって言われてしまい、仕方なく近くにあったお手頃なアクセサリーショップに移動し、俺達は別々に店内を見て回っていた。
「やっぱネックレスとかかな？指輪は後々ちゃんとしたものを用意するとして――」
『いらっしゃいませ、お探しものですか？』
婚約指輪のリサーチがてらで何となくショーケースを眺めていた俺に、店員が声をかけてきた。
『贈り物ですか？』
『はい、指輪は次の機会にしたいので、それ以外で考えてるんですが』
『贈り物は恋人にですか？奥様にですか？』
恋人……。奥様……。
なんていい響き。
そうだ、俺とAは恋人同士ってやつなんだ。
つい昨日まで、俺達の関係性がここまでの進化を遂げるなんて思ってもみなかった。
昨日までは心が折れないように、自分に言い聞かせるような言い方しかできなかった。
でも、今なら胸を張って言える。
『恋人です』
店員に幾つかセレクトしてもらったアクセサリーとにらめっこ。
Aってシンプルなもの好きそうだな。……それでも良さそうだけど、ちょっと冒険させて、きらびやか過ぎず繊細なデザインで、ちょっとしたアクセントが効いたもの……っていうのも良いな。
「あ、これとか良さそう！」
そこで一瞬我に返った。アクセサリー選びに夢中になってAをほったらかしにしちゃった。
一応Aの好みも確認しときたいから呼んでおくか。
顔をあげてAの姿を探すけど近くにはいない。Aの匂いも感じないし、彼女の方がウィンドウショッピングに夢中になって、このエリアから離れちゃった？
あり得そうで気が気じゃない。
直感が働いたアクセサリーを急いで購入してラッピングしてもらっている間に、ショップから一度出て辺りを見回す。
目を凝らし、匂いを探してAの居場所を探る。
背後からの人の流れに乗り、フワッと鼻を掠めた『あの匂い』。
振り返ると一区画離れたところにAの姿。
だけじゃない、
「えー……」
また男が寄ってきてる。
……またしても、もやもやと黒い霧が心に立ち込めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 348人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - Laurentさん» いつもコメントありがとうございます！コツコツと続きを鋭意制作中です。励みになります！頑張ります！ありがとうございます！ (2020年5月16日 11時) (
レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
Laurent(プロフ) - こんばんは！いつも楽しませて頂いております。ピュアさもありつつ作り込まれたあがしおんさんのお話が本当に大好きです……！あがしおんさんのペースでゆっくり更新頑張ってくださいね！応援しております (2020年5月16日 1時) (レス) id: 1f1ed7af51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2020年3月23日 19時
