指し示す香り ページ46
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冷静になってあたりを見回してみると道は車がすれ違えるだけの道幅はあるものの、Ｕターンができるような広いところはない。
ならばここをまっすぐ抜けて先の通りまで移動したはず。
右に走り去ったか、はたまた左に逃げたか。悩む時間も惜しい。
考えたくもないけどもう間に合わないかもしれない。遠くに連れ去られてしまったかもしれない。
それでも！
「死ぬ気で走れ！」
歯を食い縛り、地面を蹴った。
ひたすら真っすぐに喫茶店の前の道を駆け抜け、人も車も往来がない十字路に出た。
全力疾走して声も絞り出せないくらい息が切れてるけど、構わず叫んだ。
「A！」
どこだ？Aはどこに？
左右を見渡し、遠くを睨むように凝視して、色も形も分からない目標物を探し続けた。
「Aーーッ！」
心臓が弾け飛びそうなほどに早鐘を打ち、それが俺の不安を煽る。
必死に辺りを見回しながら歩を進め、十字路の真ん中で自分の足に躓き、よろけた。
膝に手を突き身体を支えたから倒れずに済んだけど、項垂れたままで頭を上げる力が出ない。
「やっぱ遅かった、か……」
諦めかけたその時。
ゆっくり、さわさわと風が騒がしくなる。
「え？」
時が止まったような錯覚にフワッと懐かしい匂いがした気がして、思わず顔を上げた。
「……お母さん？」
突然空ぶかしした車のエンジン音が響く。その音で再び俺の時間が動き出すような感覚。
音がした方角を見ると、十数メートル先でブレーキランプを点灯させた黒っぽい車が街灯に照らし出されていた。
車に気がついた時にはもう『あの』匂いはなくなって。
代わりに鼻につく排気ガスの不快な臭い。
まだ動く車の助手側のドアが開き、転がり落ちた人の姿。
「あれ、は……」
Aだ。
そうに違いないって直感した。
だって、お母さんの花の匂いが『あっちだよ』って、俺に教えてくれた直後だったから。
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あがしおん(プロフ) - そす。さん» コメントありがとうございます♪早速おさらいまでしていただいてありがとうございます！大親友くんが幸せを掴むまでのドタバタをボチボチゆるっとお楽しみに！ (2020年1月16日 23時) (
レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
そす。(プロフ) - ！！！！待ってました〜〜！！最初からとっても面白いです〜！じんくんのお話が完結した後、じみんちゃん、ゆんぎさん、じんくんのお話全部読み返したので準備バンタンですよー！テヒョン君のお話もしっかりついて行きます〜！頑張って下さい！！ (2020年1月16日 22時) (レス) id: d98d830880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2020年1月7日 2時
