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…………ジナ
「っ！！」
唐突に君の声が聞こえ、驚いて目を開けた。
慌てて離れてAを見るが、静かな顔で眠っている。
ところが僕の手の中の妻の指が僅かに震えた。
おぼろげだった彼女の甘い香りが全身から揺らめくように微かに匂い立つ。
Aが……闇の海の中で意識を取り戻したんだ。
「A？どうしたの？何か言いたいことがあるの？」
声を掛けてもあのオニキスのような瞳は僕を捉えることはない。その唇から言葉が紡がれることはない。
でも間違いなく僕に何かを伝えたがっている。
さっき口付けて聞こえた彼女の声がもしかしたら……
Aの心の声だったなら？
ならば、僕らが心を知る術はただ一つ。
再び唇を重ねた。
─ 僕だよ、A。分かるかい？ ─
Aに語りかけた瞬間、僕の身体に何かが流れ込んでくる。
“ ――“私”が逢わせてやろうか？最期くらい ”
─ え……？ ─
その流れに意識が飲み込まれ、僕の奥底に向かって押し流された。
奔流から開放され、意識の隙間から感じた覚えのある声の主を探して辺りを見回したら、視界いっぱいに広がる白銀の世界。
そして天地のなくたゆたう感覚。
─ ……ここは……！ ─
数十年ぶりに訪れた深淵。
訪れたと言うより、『彼』に引き込まれたと言ったほうが正しい気も。
でもどうして？僕はここにはもう来ることはないと――
…………ジナ
僕の深淵にAの声が響いた。
ふと気づいた、僕に向かって降り注ぐ蛍火の雨粒。……これに見覚えがある。
手をかざすと蛍火は集まりやがて人型になる。
……ジナ
淡く光る人型も手を伸ばし、僕の手をしっかり掴んだ。
引き寄せて受け止めると、僕の大好きな香りに包まれる。
……ジナ！よかった会えた！
─ どうしてっ！君がこんなところに ─
初めて出会ったあの頃と寸分違わないAが、僕の深淵に舞い降りた。
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あがしおん(プロフ) - chanさん» 嬉しいコメありがとうございます。とても励みになります！なかなか新しいお話を出せず申し訳ないです。ボチボチゆるっと頑張ります！ (2022年4月28日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
chan(プロフ) - 何回も読み直しさせて頂いてます！涙がとまりません！！素敵な作品を見せて頂いてありがとうございます！！ (2022年4月28日 2時) (レス) @page50 id: 2c037efb89 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - そす。さん» コメントありがとうございます！ジミンちゃんのお話から数えたら1年近くこのシリーズが続いてるってことだったのか？！え、長すぎ？私もびっくりです！そんなに長くお付き合いいただいて感謝しきりです！残るはあのお方……。ボチボチゆるっと……！ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - てじそく.さん» コメントありがとうございます！わざわざ前作にまで戻って読んでいただいてたなんて！何といいますか……めちゃくちゃ嬉しいです！どうぞまた読みにいらしてください♪ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 頑張りましょう！大好きです〜〜〜〜！！（涙） (2019年12月27日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年12月3日 18時
