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あぁ、ダメだ。Aの前では絶対泣かないつもりだったのに。
ベッドサイドに崩れるように顔を伏せた僕の髪を、クスクス笑いながら可愛らしい手で梳り、くるくると指に巻き付ける。
「……ほら、ジナ、笑って？」
「う、……ふぅ……っ」
こんなときでもAは変わらず僕の髪で遊ぶんだ。
何十年経とうともそんなしぐさが愛おしい。だからこそ失いたくない、まだ逝かないでと我が儘を言ってしまいたくなる。
「もう……泣き虫ね？ジニには笑ってて欲しいのに」
「んっ……うん……ごめっ、」
涙を拭ってAと目を合わせると、彼女の目尻から枕に光が零れ落ちた。
「ねえ、ジナ」
随分久しぶりに見た瞳。不安に揺れながらも覚悟を決めた瞳。
「あなたはもう判ってるんでしょ？」
「……何を？」
その瞳から視線を逸らせなかった。
「私が後、どのくらい生きられるのか」
君は知りたいの？自分の残りの時間を。
目の前に迫る死をあれ程怖がっていたじゃないか。
「……嫌だ。教えたくない」
僕は怖い。
「お願い、知っているなら教えて？」
「知ってどうするの？やっぱり別の治療法を試してみるの？」
君は首を横に振る。
「もっと長く生きたいって……最初は思ったけど、今は……」
「今は？」
「後悔がないように生きたいって。
最後に家族に会って……お世話になった人たちにまた会って……伝えておきたいこと全部伝えて、心残りがないようにしたいの」
「……A、」
「そのためには私に残された時間を知っておきたいの。
いつ、自分が最期を迎えるのか知っておきたいの。
病室からも出られないまま何も出来ずに、何の覚悟もせずに意識を失くしてしまうのは嫌なの」
僕の手を握る力をこめ、何度も瞬きをして光の粒を溢しながら懇願する妻を見て、死を覚悟した者の強さを見た気がした。
同時に僕が昔、ユンギに言った言葉を思い出した。
【最後まで傍にいてやって一人で逝かせなかったんだろ？お前の本願は叶えられたんだ、それで十分じゃないか。もういい加減受け入れろ】
僕が同じ立場に立った今だからこそ分かった。
僕はなんて残酷なことをユンギに言ってしまったのか。
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あがしおん(プロフ) - chanさん» 嬉しいコメありがとうございます。とても励みになります！なかなか新しいお話を出せず申し訳ないです。ボチボチゆるっと頑張ります！ (2022年4月28日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
chan(プロフ) - 何回も読み直しさせて頂いてます！涙がとまりません！！素敵な作品を見せて頂いてありがとうございます！！ (2022年4月28日 2時) (レス) @page50 id: 2c037efb89 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - そす。さん» コメントありがとうございます！ジミンちゃんのお話から数えたら1年近くこのシリーズが続いてるってことだったのか？！え、長すぎ？私もびっくりです！そんなに長くお付き合いいただいて感謝しきりです！残るはあのお方……。ボチボチゆるっと……！ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - てじそく.さん» コメントありがとうございます！わざわざ前作にまで戻って読んでいただいてたなんて！何といいますか……めちゃくちゃ嬉しいです！どうぞまた読みにいらしてください♪ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 頑張りましょう！大好きです〜〜〜〜！！（涙） (2019年12月27日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年12月3日 18時
