11 ページ28
.
しきりに生きたい、死にたくないと言葉を繰り返す君の姿に、自分の無力さを見せつけられたような気分だった。
君を少しでも生き長らえさせる方法を知っている。
でも使う事は許されない。
『あれ』はヒトの器を壊すもの。ヒトの命を削るもの。
だから僕の名において禁忌とした。
今の彼女の切なる願いは僕では叶えられない。
――本来ならば。
僕の血を与えればAを生き長らえさせる事が出来る。
それを知っていて使わない手はない。
Aに血を与えたらユンギには気づかれるだろうけど、強く言えばあいつは絶対口外しない。
そうして禁を破る事を誰にも言わなければ知られることはない。Aが満足いくまで生かしてあげて、天へ還るまで僕が隠し通せばいいんだ。
「A、あのね──」
僕の心に渦巻く後悔と自責の念が判断力を鈍らせ、『それ』を使おうとしている自分を止められなくなりつつあった。
“ ソッチナ、Aを壊すな ”
突然頭に響いた懐かしい声。
“ 『それ』はAを殺すことと同じだろ？ ”
“ 他の同族達を欺けても、お前自身を欺くことはできない ”
“ ソッチナ、オレ達が守ったAをお前が壊すなよ ”
ああ、そうだった。
僕はAを『始祖』から守ったんだ。
獣が……もう一人の僕が自分の存在を犠牲にしてまで守ったんだ。
そしてこれからも守ると誓いを立てたんだ。
君が天に還るその時まで。
再び禁を犯せばもう一人の僕の思いを踏みにじり、誓いまでも破ってしまうことになるんだ。
─ ごめん、止めてくれてありがとう。ジナ ─
唇を噛み、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「──僕はずっとここにいる。君の怖さと不安を僕にも分けて？」
死を知らない僕が死の不安を否定することは難しいけど、君の恐怖や不安を和らげる手伝いができれば……。
死へ進む時の流れからは守れないけれど、せめて支えてあげたい。
「一緒に戦おう。君の中の恐ろしいものと」
あの時、僕を救ってくれたように。
Next chapter
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 220人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - chanさん» 嬉しいコメありがとうございます。とても励みになります！なかなか新しいお話を出せず申し訳ないです。ボチボチゆるっと頑張ります！ (2022年4月28日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
chan(プロフ) - 何回も読み直しさせて頂いてます！涙がとまりません！！素敵な作品を見せて頂いてありがとうございます！！ (2022年4月28日 2時) (レス) @page50 id: 2c037efb89 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - そす。さん» コメントありがとうございます！ジミンちゃんのお話から数えたら1年近くこのシリーズが続いてるってことだったのか？！え、長すぎ？私もびっくりです！そんなに長くお付き合いいただいて感謝しきりです！残るはあのお方……。ボチボチゆるっと……！ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - てじそく.さん» コメントありがとうございます！わざわざ前作にまで戻って読んでいただいてたなんて！何といいますか……めちゃくちゃ嬉しいです！どうぞまた読みにいらしてください♪ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 頑張りましょう！大好きです〜〜〜〜！！（涙） (2019年12月27日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年12月3日 18時
