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テヒョンが自分を取り戻せても未だ覚醒めを見ない父親が心配で再び寝室に戻り、彼の傍で刻々と時が過ぎるのを置き時計の秒針が進む音だけで感じながら、流れる雲を見つめていた。
窓から穏やかに風が流れ込む。
風に運ばれてきた、ジャスミンの香り。
「…………、」
微かに声がした。
ハッとして振り返ると、ユンギが枕元の匂い袋を見つめていた。
「ユンギ！！」
重そうに頭を動かし、僕を見たユンギ。
光が戻ったその目を見て、もう嬉しくて嬉しくて。
「はぁぁぁぁ〜……よかっ……」
ユンギの胸に頭を乗せ、涙を堪えた。
同時に。
こんな事になるまでどうして僕に頼ってくれなかったのか、一人で抱え込むなとあれほど言ったのに。
「馬鹿野郎……」
幼いテヒョンを放って奥様の亡骸を拐った上に欲のままに汚し、自分一人“眠り”に逃げようとした挙げ句、幼子にあんな惨状を見せつけるなんて酷い事をしたのか。
「ユンギの……馬鹿野郎っ！」
安堵の裏にあった“怒り”が僕の瞳を紅く変え、部屋の空気を一変させた。
「何か月も我が子を放っておいて、何て事をしてるんだ！」
怒りで空気を凍結させながら、目覚めたばかりのユンギに跨り胸ぐらを掴み、拳を振り下ろした。
一瞬香る鉄の匂い。
瞳の奥に僕への恐怖を滲ませたユンギの口の端の血を見て、彼女と一緒に逝かせてやれない自分たちの血筋を呪った。
「屍の血を飲んだって僕らは死なないんだ！死ねないんだよ！分かってただろ？！」
僕達はヴァンパイア。屍に滞る血を飲んだって死ねはしない。
どんなに枯れ果てようとも生き血の一滴があれば、こうして目を開けることができてしまう。
愛する者の後を追うことすら許されない種族なんだ。
「テヒョンイが見つけなかったら！もっと大変なことになってたんだからな？！」
我が子の名を聞いた瞬間、苦悶の表情を浮かべたユンギ。
今更後悔しても遅い。
でも僕はそれ以上深く追い詰めることはできなかった。
我が子に一番見せなくなかった姿を晒してしまって、一番後悔しているのはユンギ本人なんだ。
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あがしおん(プロフ) - chanさん» 嬉しいコメありがとうございます。とても励みになります！なかなか新しいお話を出せず申し訳ないです。ボチボチゆるっと頑張ります！ (2022年4月28日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
chan(プロフ) - 何回も読み直しさせて頂いてます！涙がとまりません！！素敵な作品を見せて頂いてありがとうございます！！ (2022年4月28日 2時) (レス) @page50 id: 2c037efb89 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - そす。さん» コメントありがとうございます！ジミンちゃんのお話から数えたら1年近くこのシリーズが続いてるってことだったのか？！え、長すぎ？私もびっくりです！そんなに長くお付き合いいただいて感謝しきりです！残るはあのお方……。ボチボチゆるっと……！ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - てじそく.さん» コメントありがとうございます！わざわざ前作にまで戻って読んでいただいてたなんて！何といいますか……めちゃくちゃ嬉しいです！どうぞまた読みにいらしてください♪ (2019年12月27日 1時) (レス) id: cab6f14aeb (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 頑張りましょう！大好きです〜〜〜〜！！（涙） (2019年12月27日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年12月3日 18時
