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今噛みついたらダメだ。リビドーが獣を突き動かしてしまう。何も知らないAに襲い掛かる。
耐えなきゃ。堪えなきゃ。
僕じゃなきゃ獣は抑えられない。
なのに。
限界を越えていた僕はその香りに思考が麻痺し始め、僕を唆す『獣』の声に抗えなくなり、遂には手首に合図の口づけをし、おもむろに口を開けてしまった。
Aの指がぴくんと動いた。
僕の胸が跳ね上がり、すぐに口を閉ざした。
ふっとAの瞼が開く。やがて寝惚け眼に僕が映る。
君の瞳の中の僕は、きっと紅い瞳をしているはず。でも彼女はフニャッと笑って、
「手にちゅーするの、好きね……？ジナ？」
声をとろんと甘く響かせた。
僕に捕まった手がするりと抜け、頬を通り過ぎ、耳の傍の髪を優しく梳いた。
暗がりで紅くなった瞳に気づかないのか、寝惚けて見てないだけか。
……多分、後者。
僕の短い毛先を指に緩く巻き付けて遊ぶAの顔は、今にも眠ってしまいそうだから。
「ちゃんと意味があるんだよ？手に口づける意味──」
「ふぅん……そうなの……どんな……？」
とろんとした声はすぐに枕に吸い込まれ、僕の耳に届く頃には微かな音だけ。
「また今度教えてあげる。だからもうおやすみ？」
「ん……」
そのうち櫛梳る手が緩やかになり、Aの意識は再び夢の中へと戻ってしまった。
こんなに無防備な彼女に、お伺いもたてずに自分勝手に噛みつくなんてできない。
そっとAの手を布団の中に戻し、背を向け、酷い罪悪感に苛まれる胸を押さえた。
僕はまだ何らかに“縛られ”ているのかもしれない。
それが何なのか、何となく分からないでもないけれど。
「ごめんね、獣。ちゃんと言うから、僕のこともお前のことも。だから今夜はもう勘弁して……」
布団に頭から潜り込み、眠くもないのに無理矢理目を瞑った。
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あがしおん(プロフ) - ははまさん» 遅ればせながらコメントありがとうございます。キュンキュンですか？良かったです！書いてる私はずっと赤面でした（照） (2020年9月8日 0時) (
レス) id: 7e5b19fe00 (このIDを非表示/違反報告)
ははま - きゃあああああああやばい...もうキュンキュンあのシーン...(ピョンテ)私もされたいです(殴 (2020年8月3日 15時) (レス) id: 6857bf1000 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - LiLiさん» LiLiさん、コメントありがとうございます！すごく褒められちゃって、小躍りしております！そう言って頂けて作者照れくさいです。本編をお楽しみ頂けて幸いです。更新はボチボチゆるっとですので、のんびりとお待ち下さいね♪ (2019年10月31日 22時) (レス) id: d4473d8198 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi(プロフ) - いつも楽しませて頂いてます☆あがしおんさんのお話は ファンタジーなのに人間的な内面まで細かく描かれていて、リアルに共感できる素晴らしい作品だと思います^^本編でのジミンの分裂が、まるで自分の事の様で 涙が出ました！これからも楽しみに待ってます♪ (2019年10月31日 21時) (レス) id: e57cf50558 (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 嬉しいです（；＿；）がんばりましょう！ (2019年10月30日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年10月16日 1時
