5 ページ5
.
結局その後も仕事に追われ、夜になってもAに構ってあげられず、先にベッドで眠る彼女の寝顔を見つめて今日が終わった。
暖かなベッドに潜り込み、Aの枕の下に僕の腕を差し込んで距離を縮める。
穏やかな寝息をたてる彼女を見つめ、髪を撫で、頬に触れた。
「僕って結構意気地無しだったんだな」
人間の男なら、ここでキスのひとつでもして眠る彼女の素肌に手を滑らせるのだろうが、僕はそれができない。
添い寝することも口づけを交わすこともできるけれど、Aと情を交わすことはまだできない。
彼女にラストを感じれば、必ず吸血したくなる。逆もまた然り。それ程に僕らは欲が直結しやすい。
そんなことになればたちまち本能の獣が顔を出し、Aに喰らいついてしまう。
そして彼女の全てを貪るんだ。
“あの時期”の最中は僕でもそれを止められない。
僕も獣と共に快楽に溺れてしまうから。
“ なぁ、ソッチナ ? ”
必死の自制の真っ只中で深淵から声がした。
“ 目の前のご馳走を食わずに
とっておくつもりかい ? ”
─ お前の言いたいことは解る。
でもまだだよ ─
“ そろそろお前も限界の癖に、
何を耐えてるんだよ ? ”
─ Aはまだ知らないんだ。
だから、 ─
“ だから、何で耐える必要があるんだよ ?
こんなのは…… ”
獣が僕の手を動かし、Aの手首を僕の口許に引き寄せた。
薄く皮膚が拍動すると共に、甘く誘う香りがふわふわ匂い立ち、僕の欲を煽る。
“ ほら、こんなに簡単に手に取ることができる。
今すぐにでも喰らい付ける ”
“ なあ、ソッチナ ?
寝ている今が頂くチャンスなんじゃないか ? ”
“ お前だって今一瞬、そう思ったろ ? ”
獣が囁く。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 184人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - ははまさん» 遅ればせながらコメントありがとうございます。キュンキュンですか？良かったです！書いてる私はずっと赤面でした（照） (2020年9月8日 0時) (
レス) id: 7e5b19fe00 (このIDを非表示/違反報告)
ははま - きゃあああああああやばい...もうキュンキュンあのシーン...(ピョンテ)私もされたいです(殴 (2020年8月3日 15時) (レス) id: 6857bf1000 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - LiLiさん» LiLiさん、コメントありがとうございます！すごく褒められちゃって、小躍りしております！そう言って頂けて作者照れくさいです。本編をお楽しみ頂けて幸いです。更新はボチボチゆるっとですので、のんびりとお待ち下さいね♪ (2019年10月31日 22時) (レス) id: d4473d8198 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi(プロフ) - いつも楽しませて頂いてます☆あがしおんさんのお話は ファンタジーなのに人間的な内面まで細かく描かれていて、リアルに共感できる素晴らしい作品だと思います^^本編でのジミンの分裂が、まるで自分の事の様で 涙が出ました！これからも楽しみに待ってます♪ (2019年10月31日 21時) (レス) id: e57cf50558 (このIDを非表示/違反報告)
ろーらん?(プロフ) - あがしおんさん» 嬉しいです（；＿；）がんばりましょう！ (2019年10月30日 1時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年10月16日 1時
