広いベッド ページ47
.
普通の人間なら、お風呂上がりの一杯を嗜むところだろうけど、ヴァンパイアの僕には無縁の習慣。
シャワーを済ませて寝室に戻り、掛け布団をめくって中に滑り込んだ。
シーツから香るこの匂いも久しぶり。
滞在先のホテルのベッドの匂いに慣れるまで、寝付けなかったもんなぁ。
もぞもぞとベッドの中心まで移動して大の字になると、指先がちょんと何かに触れる。
「……ここに居たんだ。もう……真ん中で堂々と寝てればいいのに」
広いベッドの反対側の端に細くなって寝ている小さな背中。
そっと背中を包むように抱きしめると、もぞもぞしだすその身体。
寝返りをうち、薄っすら開いた黒い瞳が僕を漸く捉えた。
「……あ、おかえりなさ、い……？」
「ふふっ！ただいま、Aさん」
「え？いつ戻って来たの？！」
僕の顔を見るなり一気に覚醒して、慌てて起き上がろうとしたAさんの身体をグッと捕まえて自分の胸に引き寄せた。
「ほんの３０分前だよ」
「えー！連絡してくれたら寝ないで待ってたのに」
「時間が遅かったから寝かせてあげたくて。それにちょっとびっくりさせたくてさ？」
半年ぶりの甘くて優しい極上の香り。
僕の大好きな香り。
やっぱりこの香りが何よりも一番好き。
「ふふ！私、びっくりしたから大成功？」
「うん！でも、次があったら寝ずに待っててもらおうかな？」
「どうして？」
「Aさんの『おかえり』を玄関で聞きたいから」
そう言っておでこにキスをすると、僕の胸に顔を隠す様にくっつけたAさん。
そうしてすぐに隠して照れるんだから。
でも、隠しきれない気持ちがふわふわ甘い香りになって立ち上った。
僕は香りで分かるってば、そういうの。
そんなに嬉し恥ずかしい甘い香りさせちゃって。
嬉しくなってぎゅっと抱き締めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 867人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - Ho7mIさん» 貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。お気に召していただけて幸いです！メッセージからお気持ちがひしひしと伝わってきて嬉しくなりました！ (2022年3月8日 17時) (
レス) id: e91d697857 (このIDを非表示/違反報告)
Ho7mI(プロフ) - こんにちは！朝から一気読みさせていただきました。私の大好きなジミンさんが全面的に出ていて、最後まで崩れず話の内容も素敵でとても感動しました。言葉にするにはとても難しいですが、感動しました！それにつきます！ (2022年3月8日 15時) (レス) @page49 id: 80eccc6363 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - あがしおんさん» わー！！お気遣いありがとうございます🥺少し寝不足になりましたが、寝不足になってでも読みたくて仕方ありませんでした（笑）早速Twitterの方をフォローさせていただきますね！素敵なお話ありがとうございました🥰 (2021年10月6日 16時) (レス) id: 76f62b336d (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます！お気に召していただけて何よりです♪一晩で読破されたということで寝不足ではないかと心配してます(汗) PS：Twitterしておりますよ。かなり毛色違いの小瓶ばかりですが。妄想の小瓶Display shelfというところにリンクございます♪ (2021年9月23日 14時) (レス) id: 4abbe27fc2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - あがしおんさん；；一晩かけて読ませていただきました😿甘くて切なくて号泣したりキュンとしたり感情が大変でした😭お互いの一途さ真っ直ぐさがすごく泣けてきて最高でした😭多分もう一周します笑 PS あがしおんさんはTwitterなどはやられていますか？ (2021年9月23日 8時) (レス) id: 76f62b336d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年4月7日 0時
