こんな僕でも・・・が欲しい！６

† 暗示を解く前に ページ42

SJ side



　僕達は今、Aちゃんの部屋に上がらせていただいて、勝手にで申し訳ないけれどジミンにシャワーを貸してもらっている。
　この時間を利用してユンギは車でジミンの着替えを取りに家に戻り、僕はAちゃんの寝室にお邪魔させてもらってAちゃんと二人きりでいる。


　いや、決して。
やましい事をしに来たわけじゃなくて。
Aちゃんの暗示を完全に解くためであって。


「ふわぁ〜！美味しそうなAちゃんの香りでいっぱいだなぁ！」

　感激のあまり盛大に漏らした本音。


　あ、いや、決して下心は……




……なくもないのが正直なところなんだけど。


　背後の視線に気づいて振り返ると、二つ目の暗示から脱してもまだ半覚醒状態のAちゃんが、光を取り戻しきれていない瞳で僕をじっと見ていた。

　どんなに意識が操られてるとはいえ、そんなに見つめられてるとやっぱり恥ずかしいよ？Aちゃん。

「は、恥ずかしいからあんまり見つめないで？」
「……、…………、」

　小声で何かを呟いたAちゃん。耳を唇に近づけてみると、


「ご、めん、な、さい」


　暗示が解け切っていなくても、AちゃんはAちゃんだった。

「ふふ、可愛いなぁ。謝る事ないよ。さあ、ジミニが戻るまでに元に戻してあげるね？」

　そっと頭を撫でてAちゃんの手を取り、ベッドに誘導するとふわりと腰を下ろした。


　Aちゃんの前に跪き、人形のように虚ろな目で腰かけるAちゃんと見つめ合う。
そっとAちゃんの頬に手を伸ばしてサラリと顎まで指先を滑らせる。淡く紅い唇を親指でなぞった。




　一瞬、このまま掛けたままにしておきたいという邪な気持ちが顔を覗かせる。


　引き寄せられるように近づく唇。
このまま唇を重ねてもう一度、強い暗示で上書きしてしまえば、Aちゃんは本当に僕の人形になる。
そして二人であの窓から逃げ出してしまえば──。

そうしてしまえばAちゃんをこのまま僕のものにできるだろう。


　愛の言葉は囁いてくれなくなるけど、僕の傍にいてくれる。命じれば僕を愛してくれる。



　この子の命が尽きる日までずっと。

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