試練を与える強い者 ページ35
？？
「さあ、どうした？お前が助けてあげられなきゃ、この子は僕のものだよ？」
「“……っ”」
「どうしてあげればいいか、考えてごらん？」
「“A……”」
ボクが手を伸ばすけど、Aは一歩も動かない。
「“ボクのところに”」
ボクを見ない。声を聴いてくれない。
「“何で……聞こえてるだろ？！”」
ざわっと毛が逆立つ。
ボクは短気だ。
思うようにいかないと怒りを力に変えて相手を潰そうとする。屈服させようとする。
怒りがトゲとなってAに飛びかかる。
トゲはAに届く前に強い者の怒りに掻き消される。
父さんの怒りはボクにもぶつけられ、地面に叩きつけられた。
冷たく睨み付ける父さん……同族で一番強い者。同族を統べる者。
「何故怒りをぶつける？お前の愛する者だろう？
何故傷つけようとする？」
違う、そんな事してない。
傷つけたいんじゃない。気づかせたいだけなのに。
でも短気なボクでは他の方法が見出せない。
冷気が緩んで凍っていた足の再生がどうにか進み、引き摺れば足は何とか動かせるまでに回復していた。体中の生気を散々使い続けてもう残り少ない。
よろけながら立ち上がり、Aに近づいた。
足りない。
欲しい。
あの血が欲しくてたまらない。
一歩近づく毎にあらゆる欲を掻き立て、ボクを誘う甘い匂いが強くなる。
あぁ、欲しい。
喰い尽くしたい程に。
ボクがこんなに求めているのに……。
なのにどうしてボクを見ない？
もう一度手を精一杯伸ばしてその肩を掴んだ。
「“ボクを見ろ！ボクを求めろ！ほら！あの時のように！”」
ミシッと細い肩に指が食い込む。
それでも表情ひとつ変えず立ったまま、闇を見つめる漆黒の瞳。
「止めろ！肩が潰れる！」
ボクの手は父さんによって力いっぱい振り払われた。
立っているのがやっとのボクの身体は、そのままの勢いで冷たい地べたに転がった。
父さんは、癒すように優しくAの肩を撫で、冷たい赤でボクを睨む。
その目を見てまた蘇る、いつかの人間の男に焼き付けられた恐怖。
深淵の闇の触手に絡めとられ、引きずり込まれるあの感覚に震えた。
「ヒントだけあげる」
……強い者が口を開く。
「今のお前だけではダメなんだよ。この暗示を解くことは」
「そして、」
「お前が閉じ込めたもう一人の自分だけでもダメなんだよ」
「分かるかい？ジミナ？」
その瞳は、おかあさんに似た、優しい赤だった。
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あがしおん(プロフ) - 舞子さん» 舞子さん、初めまして！コメントありがとうございます！お気に召していただけて嬉しいです♪そして、泣かせてしまって申し訳ないです(汗) (2020年4月30日 13時) (
レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - あがしおんさん、初めまして。気づいたらあがしおんさんの世界観と描写に酔い、親子、師弟関係の絆に号泣していました。素敵な作品に出会えて幸せです。公開して下さり、ありがとうございます。 (2020年4月30日 4時) (レス) id: acc8d9f98e (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - カナタさん» カナタさん毎度ありがとうございます！ジミンちゃんは無事和解成立！テヒョン君はミッション中のご様子･･･ｗテヒョン君はミッションクリア成るか？（爆） (2019年4月6日 2時) (レス) id: 1e736e073a (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - ジミンちゃん's よかったね！なかよくするんだよ〜ヽ(；▽；)そしてまさかの繋がりwww お久しぶりのテヒョンくんですね！ (2019年4月6日 1時) (レス) id: 0d504a4dae (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - そす。さん» そす。さん、いつもコメントありがとうございます！いやー！長かった、このターン！ラスボス、待ちくたびれてますよ……ねぇ？w (2019年4月1日 7時) (レス) id: 79d9a7f227 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年3月17日 0時
