そのこころもて･･･ゆえに

109 ページ9

YG side


「ユンギさん、私、何ができますか？」
「何って……」
「奢らせてもらえないんなら、その代わりです。私に何かできる事ありますか？」

こいつ、どこまでお人好しなんだよ……。
俺みてぇなバカ野郎がお前にして貰う事なんて……。

「タクシーで帰ってもよかったのに、ユンギさんの部屋にお邪魔させてもらって、しかもお風呂までいただいて。これ以上借りばかり作れません」

ずっとその目は不安げに揺らしているのに、借りを返そうとか考えてやがる。


あーもう……。


お前は頑固なんだって……。



そういうところが気に入ってんだ、俺は。






これが俺に与えられたチャンスなら、今が伝える時なんだろうな。





「……っ」



意を決し口を開くが、いざとなると声が出ない。



言葉が上手く出てこない。


ただ心臓が苦しいほどに締め付けられるばかり。



ひと言言いたかっただけなんだ。ただ伝えたいだけなんだよ。




もう息をするのだってしんどい。


何度息を吸い込んでも吐き出しても、引っかかったままなんだ。



言葉が喉の奥で引っかかって出てこねぇんだ。

110→←108

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す